大食いはスポーツかエンタメか。MAX鈴木が語るアスリートの自負「認められるまであがき続けたい」 (3ページ目)

  • 川原田 剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 立松尚積●撮影 photo by Tatematsu Naozumi

大食いがスポーツとして受け入れられるために

ーー日本の文化を変えるためには、次世代の人材も必要になりますね。

MAX鈴木
 そのために大食いや早食いの大会「侍イーティング SAMURAI EATING」を主催しています。そこから若い選手が育ってほしいですが、なかなか難しいです。やっぱり、お金が稼げるYouTuberやエンタメ方向に流れてしまう。それは仕方ない面もあります。たとえば、賞金総額1000万円の大会がいくつかあれば、本気でスポーツとしての大食いを目指すと思いますが、そういう場が日本にはほとんどないんです。人を育て、文化を変えるというのは正直しんどいですが、大会にスポンサーもついてくれています。少しずつですが、認められているのかなとは感じています。

この記事に関連する写真を見るーー自身の海外進出についてはどう考えていますか?

MAX鈴木 「ネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権」には2018年と2019年に出場しましたが、トレーニングの段階で、もう勝てないのはわかっていました。それくらいチャンピオンのジョーイ・チェスナットは飛び抜けた存在です。彼がメジャーリーガーだとしたら、僕はもうリトルリーグです。

 日本だったら10kgのカレーを60分で完食できる人はそういません。でもアメリカのトップ連中は10 kgのカレーを10分間で食べるという世界なんです。大食いプラス、一番キツい早食いもこなしちゃう。それくらい実力が違います。チェスナットの動きは人間技とは思えません。彼にとってホットドックはマジで飲み物。感覚的に「ウイダーinゼリー」です。

ーーそのチェスナットを倒すのが今後の目標ですか?

MAX鈴木 チャンピオンを倒すというのは置いといて、「ネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権」の世界記録はチェスナットが2021年に記録した10分間で76個なんです。その記録を抜くのが目標ですね。

 この2年間はコロナの影響もあり、この大会に出場できていませんが、会場の雰囲気がすごくいいんですよね。まるでロックの野外コンサートかというくらい大勢の人が会場に詰めかけ、試合はアメリカ全土に生放送されます。だから試合後に街中を通ってホテルに帰る時には、「今日、見たぞ。すごいな」と多くの方が声をかけてくれます。そんな最高のステージで日本人として世界新記録を出したいです。

ーーアメリカと日本では大食いの受け入れられ方が全然違うんですね。

MAX鈴木 この大会に参加する全員が自分の限界に挑戦するために戦っています。完全にスポーツです。だから試合が終わったあとは参加者みんな、すごくさわやかです。「俺は全部出しきったけど、お前もすごかったな」とか、お互いに健闘をたたえ合っています。どんなスポーツでも試合後はそうじゃないですか。そういう空気感を日本でもつくっていきたいんです。おそらく大食いをスポーツとして捉えていないと、そういう感覚の共有はできないと思いますので、それは僕に課された役目かもしれないですね。

 やるべきことはたくさんありますが、借金まみれのどうしようもない男が大食いに出会い、妻やラーメン屋「表裏」のアニキの支えがあって、ここまで人生が変わったんです。恩返しと言ったらおこがましいかもしれないですが、日本で大食いがスポーツとして認められるようになるまで、必死にあがき続けたいと思っています。

(終わり) インタビュー前編から読む>>

撮影協力/「豚大学 神保町校舎」

【プロフィール】
MAX鈴木 まっくす・すずき 
フードファイター。本名は鈴木隆将。1980年、東京都生まれ。2015年の「元祖!大食い王決定戦」(テレビ東京系列)で初めて大食いの大会に出場し、いきなり完全優勝を果たす。その後、2017年、2020年の同大会でも優勝したほか、2018年の「全日本わんこそば選手権」では大会新記録632杯を達成。2018年、2019年には「ネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権」に出場して、それぞれ決勝7位、決勝5位の記録を残す。自身のYouTubeチャンネル「MaxSuzuki TV」は70万近くの登録者数がいる人気ぶり。

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