錣山親方が躍進する力士2人を絶賛。夏場所での好スタートに「ここがすごい」 (2ページ目)

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

 そんな彼が今場所は、前頭2枚目まで上昇。初日から大関・貴景勝戦が組まれました。琴ノ若にとって、貴景勝は埼玉栄高相撲部の1学年上の先輩。これまで勝つことができなかったのですが、まわしにこだわらない攻めを見せて、初めて貴景勝から白星を挙げました。前に圧力をかけていったところもよかったし、何よりおっつけの強さが利いていましたね。

 そして2日目は、大関・正代戦。正代の攻めをしのぎながら、器用な突き落としで勝利を飾りました。

 さらに、3日目の大関・御嶽海戦も見応えがありました。土俵際まで攻められたものの、逆転の突き落としを披露。一度は御嶽海に軍配が上がりましたが、琴ノ若の足が土俵に残っていたため、軍配差し違えで琴ノ若の勝利となりました。

 昨年の秋、このコラムで私は、琴ノ若について「相撲が中途半端。突いていきたいのか、組みたいのか、よくわからない。相手に合わせて相撲を取っている」とコメント。「頑張ってほしい」という気持ちが強いゆえの苦言だったのですが、それから半年ほどが経った今、それらが見事に改善されています。

 率直に、強くなっているし、力がついています。加えて、器用さを持ち合わせているのが魅力です。入門当時はまだまだ子どもでしたが、今や一本筋が通った力士に成長。これからがますます楽しみな存在です。

 その他、新関脇だった先場所で初優勝を遂げた若隆景が今場所も強さと巧さを見せています。

 特に3日目の遠藤戦で見せた相撲は圧巻でしたね。最後は上手出し投げで遠藤を下したのですが、相撲巧者の遠藤が"巧さ負け"したシーンを久しぶりに見たような気がします。

 私は優勝経験がありませんが、初優勝の翌場所は他の力士たちから徹底マークされるうえ、疲労も重なって、好成績を収めるのが難しいことが多いです。けれでも、若隆景はこれまでに、揉まれに揉まれて上位に番付を上げてきた力士なので、そうした心配はなさそうです。

 というより、今は対戦相手が若隆景に対して「どんな相撲を取れば嫌がるんだろう?」と考え込んでいるのではないでしょうか。そうした状況を考えれば、若隆景は"下から攻める"これまでどおりの相撲を取っていけば、十分に上を狙えると見ています。

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