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相撲女子が胸キュン必至。「ひねり王子」
炎鵬はニュータイプの力士だ (2ページ目)

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji
  • photo by Kyodo News

 師匠の宮城野親方(元幕内・竹葉山)は、「そうしたこれまでの小兵力士は、相手に密着して食らいつく相撲だった。しかし炎鵬は、動いて動いて横から崩す相撲なので、過去の小兵力士とはまったく違う相撲内容です」と評する。その相撲が炎鵬の"生命線"になっているため、宮城野親方は稽古場で「絶対に止まってはダメだ」と口酸っぱく指導しているという。

「止まるとあの体だから上から潰されてしまう。幕内で上位に行くためには、とにかく動くこと。とくに横から攻める動きは、他の力士にはない彼だけの武器ですから、そこを最大限に生かさないといけないんです」

 続けて親方は、中日まで4連勝を含む好成績について「(動く相撲を)徹底して貫いていることが星に表れている」と評価した。確かに、共に「足取り」で勝った3日目の佐田の海、8日目の千代丸との一番は、止まることなく攻め続けた会心の内容で、「令和の牛若丸」と呼ぶにふさわしい動きだった。

 6日目は178キロの矢後を相手にスピード感あふれる相撲を展開し、79キロの体重差をものともしない攻めで最後は「上手ひねり」で転がした。一方で7日目に対戦した、116キロと同じく小兵の照強との一番では、右上手を引かれて動きを止められ、「裾払い」で敗れている。

「止まったら負けるという覚悟で土俵に上がってほしい」と、あらためて期待を口にした師匠は、今後の課題についても次のように述べた。

「今場所は、幕内の関取衆も初めて対戦する力士が多いから、炎鵬の動きに慣れていない面もあって、それが勝ちにつながっているところがあると思います。来場所からはみんな徹底的に研究してきますから、そうはいかなくなると思う。だからこそ、そうした慣れを上回るぐらいのスピードで動かないといけません」

 そんな師匠の言葉を受け、炎鵬も「気持ちを引き締めていきたい」と、目標の2桁勝利と三賞獲得へ、終盤戦に向けて気合を露にする。

 今場所は白鵬が休場したため、兄弟子の石浦と共に露払い・太刀持ちを務める「横綱土俵入り」は実現しなかった。楽しみは来場所にお預けとなったが、炎鵬は「優勝決定戦で横綱と対戦してみたい」とさらなる夢を掲げる。

 端正なマスクで"相撲女子"のハートもわしづかみにする炎鵬は、小さな体に大きな夢を詰め込んで、令和の土俵で躍動する。

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