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コーチの「喝!」でチームは改善。
フェンシング女子金メダルの舞台裏 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 奥井 隆史●写真 photo by Okui Takashi

 気持ちを引き締めて臨んだ1番手の宮脇は、3分間をフルに使う落ち着いた戦いで4-1とリードし、いい流れを作る。しかし、2番手の東は個人戦で圧勝していた相手に5連続得点を奪われて6-6と並ばれると、その後日本は流れを掴めず、宮脇も6点を奪われて10-13と逆転されてしまう。

 中国のしぶとさを見せつけられて勝ちきれないなか、チームを支えたのが、今回スタメンに抜擢された辻だった。

「『自分が勝ちにして回すぞ』とずっと思っていました。うまくいかなくても我慢をして無駄な失点を避け、ちょっとでも差を詰めて回そうと思っていた」

 その言葉どおり、辻は持ち味であるディフェンス力を存分に発揮して1回目は3-1、2回目には4-2と、いぶし銀の粘り強い勝負をした。そして、3回目の登場となった第7ラウンドでは、負けていた状態を28-27に勝ち越しにした。続く宮脇は、直前の失敗を挽回するように時間を使ってじっくり戦い、31-29にして最後の東に引き継いだ。

 最終ラウンドの残り6秒。34点目を取って日本がリード。これで勝負は決したと思われたが、中国はここでもしぶとさを発揮して、2秒後には同点に。結局そのまま時間切れとなり、1分間の1本勝負になったが、ここで勝ち切ったのは日本だった。

 一本勝負の残り23秒、東がポイントを奪って決着をつけた瞬間、宮脇はピストを駆け上がって東に抱きついていた。女子フルーレ団体がアジア大会初優勝を飾ったこの勝利について、宮脇はこう話す。

「山は韓国戦かなと思ったけど、やっぱり中国は勝ちに貪欲でした。途中でマイナスになったけど食らいついて、粘ってもぎ取った優勝だったと思います」

 東は「6月のアジア選手権の決勝も一本勝負だったけど、韓国に負けてしまっていたので、今回こそ勝ちたいなと思って。『突くぞ!』ということで頭の中はいっぱいでした」と振り返る。

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