限界から見せた最後の手伸ばし。
野口啓代がアジア女王の座を掴み取る
「今の自分にとっては、ハードルの高い挑戦での金メダルでした。終始ギリギリの戦いだった」
東京五輪の正式競技となり、インドネシアで開催中のアジア競技大会でも初めて採用されたスポーツクライミング。パレンバン・ジャガバリンスポーツシティで行なわれた女子コンバインド(※)で、野口啓代が初代チャンピオンの座についた。
※対戦形式で登る速さを競うスピード、4mの高さの壁に複数の課題を設け、クリアした課題の数を競うボルダリング、12メートル以上の壁を制限時間内に登れる高さを競うリードの3種目により順位を決める複合種目
逆転でアジア大会を制した野口 ボルダリング・ワールドカップで21回の優勝を数え、2018年シーズンを含む4度の年間女王に輝いた実績のある野口にとっても、表彰台の頂点への道は楽ではなかった。
野口は8月23日から25日に行われた予選を、スピード11位、ボルダリング3位、リード2位の総合3位で通過。優勝を狙える位置から決勝をスタートしたが、思うようなパフォーマンスが出せていなかった。前週にドイツ・ミュンヘンで行われたボルダリング・ワールドカップ2018の最終戦を戦い、疲労を残したままインドネシアに入ったことから「とてもハードで、暑いこともあってかなり厳しかった」と振り返った。
6人で争う決勝の第1種目、スピードでも最下位に沈む。しかし、野口はしっかり気持ちを切り替えていた。
「私はスピードがあまり得意ではないので、『ボルダリングで1位を取れば絶対大丈夫』と言い聞かせていました」
その言葉通り、全選手の内で唯一、ボルダリングの4つの課題を完登。かなり難度の高かった最終課題は、指の強さ、体の強さ、体のポジションなど、さまざまなものが要求された。それでも、「この課題を登らないと1位になれない。ここまでボルダリングを頑張ってきたから、この種目だけは譲れない」と、意地の完登で1位を獲得し、総合順位を韓国のサ・ソルに次ぐ2位まで上げてリードへと繋げた。
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