ボルダリング新女王、21歳の野中生萌が語る「メンタル面の変化」
W杯ミュンヘン大会で2位となり、年間優勝を飾った野中生萌 ボルダリング・ワールドカップ(W杯)最終戦、ミュンヘン大会。最終課題を一撃で仕留めると、21歳の野中生萌(みほう)はホールドに両手をかけたまま、喜びと安堵が入り混じった表情を浮かべた。マットに降り、しゃがみこむと両手で顔を覆う。呼吸を整えてから立ち上がると、今度は満面の笑みで大観衆に大きく右手をふりながら、左手でもう一度、涙を拭った。念願のW杯年間チャンピオンに輝いた瞬間だった。
「正直、その瞬間はすごくうれしかったんですけど、今はちょっと、年間優勝......本当にしたのかなっていう感じですね」
少し興奮気味に早口で、そう振り返った。
全7大会で争われるボルダリングW杯の女王争いは、早い段階から野中と野口啓代(あきよ)の一騎打ちとなった。野中は初戦のマイリンゲン(スイス)大会で優勝すると、残る6戦はすべて2位に入った。一方の野口は優勝3回と3位が4回。2人ともすべての大会で表彰台に上がっている。年間ポイントを見ると、野中が500ポイント、野口は490ポイント。3位のファニー・ジベール(フランス)が320ポイントだから、いかに2人が突出していたかがわかる。
昨季の王者、ショウナ・コクシー(イギリス)は負傷がひびいて7大会中4大会にしかエントリーせず、出場した大会も6位~9位と、調子が出なかった。また、このミュンヘン大会で優勝を飾ったヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)は、ボルダリングでは3大会にしか出場していない。そんなライバルたちの事情も追い風となったが、2人の安定感はやはり抜きん出ていた。
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