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【トライアスロン】小さな鉄人・上田藍が狙うリオの「金メダル」 (2ページ目)

  • 水野光博●構成・文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • 五十嵐和博●写真 photo by Igarashi Kazuhiro

 彼女は中学で水泳部に所属していたが伸び悩む。高校では陸上部で3000mを専門にした。日に20kmを走り込むなど、コーチに「練習量は誰にも負けていない」と言われるほどの練習の虫となった。こんなエピソードがある。ある日、男子部員が彼女に言った。

「もし上田さんと付き合ったら、デートはジョグっぽいね」

 しかし、そこまで打ち込んでも成績は思うようには伸びなかった。京都府で8位入賞するのがやっと。自分よりタイムが悪かった選手にも次々と抜かれていく。くじける要素はいくらでもあった。だが、彼女は前だけを向いた。

「私はまだ未完成だ。完成への過程だ。自分に期待する思いが、心のどこかにあったから」

 手描き友禅の職人の両親も、彼女を励まし続けてくれた。

「いつか藍は勝てるよ」

 転機は突然訪れる。高3の夏、トライアスロンの存在は知っていた彼女が、何気なくローカル大会に参加する。そして、初出場にかかわらず高校生の部で優勝。喜びと同時に、思った。

「自分の全てを掛ける価値がある競技を見つけた!」

 ただ当時、トライアスロンに関する情報はほとんどなかった。すると両親が専門誌を読みあさり、現在も上田を指導する稲毛インターナショナルトライアスロンクラブの山根英紀コーチの存在を探し出してくれた。行動派の父は、いきなりクラブに電話をかける。

「シドニーオリンピックの代表選手を育てた実績あるコーチに、ローカルの小さな小さな大会に1回勝っただけの娘を持つ父が、突然電話したわけです。『うちの娘、どうでしょう?』って。しかも、私がまったく知らないうちに。今思えば恥ずかしいですよね(笑)」

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