【トライアスロン】小さな鉄人・上田藍が狙うリオの「金メダル」

  • 水野光博●構成・文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • 五十嵐和博●写真 photo by Igarashi Kazuhiro

 70年代後半、ハワイのとある酒場。体力自慢の水兵たちが、「マラソン、遠泳、バイク、どの競技の王者が最も偉大か?」という話題に花を咲かせていた。喧々諤々(けんけんがくがく)の激論も答えは出ない。すると、ひとりの男がこう言った。

「だったらいっぺんに全部やって決めればいい」

 それが、トライアスロンという競技が産声を上げた瞬間だった。

3度目五輪出場をかけて、日々練習に励んでいる上田藍選手3度目五輪出場をかけて、日々練習に励んでいる上田藍選手 伝説の酒盛りから40年後、上田藍は顔も知らない水兵たちに思いを馳せ、感謝する。

「水泳と陸上、私の大好きな競技がふたつも入った贅沢なスポーツを、今まで私が流した汗を全部生かせるスポーツを作ってくれて、ありがとうございます」

 2000年のシドニーオリンピックからトライアスロンは正式種目となり、スイム1.5km、バイク40km、ラン10km、計51.5kmの距離で競技は行なわれる。

 北京、ロンドン、二度のオリンピック出場経験を持つ競技歴15年、31歳の上田は、現在も自己ベストを更新し続け、来夏狙っているのは3度目のオリンのピック出場だけではない。155cmの小さなアイアンガールは言う。

「表彰台の一番上、金メダルを狙います」

 青春は時に残酷だ。競技へ注いだ愛情と練習量が、成績と正比例はしない。

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