2015.12.01

迷走する新国立競技場。ザハ案になぜ決まり、白紙撤回されたのか

  • text by SPORTIVA 日本スポーツ振興センター/AP/アフロ●写真提供

「スタジアムの話をしよう」山嵜一也×杉山茂樹(前編)

 イラク出身でイギリス国籍の建築家、ザハ・ハディド氏の案にいったんは決まりながら、白紙撤回された新国立競技場。巨額の建築費ばかりが注目されたが、問題はそれだけではなかった。2020年の東京五輪に必要なのはどんなスタジアムなのか。イギリスで12年間、建築設計に関わり、ロンドン五輪では馬術の会場を担当した山嵜一也氏と、スポーツライターとして世界各地のスタジアムを訪れてきた杉山茂樹氏が語り合った。

白紙撤回された新国立競技場のデザイン案杉山 山嵜さんがイギリスから帰国したのはいつ頃ですか。

山嵜 2013年の1月です。

杉山 新国立競技場のコンペをやっていた時にはまだロンドンにいらしたんですね。

山嵜 そうですね。2012年のパラリンピックが9月に終わって、10月1日に勤務先に「日本に帰るので辞めます」と伝えました。ちょうどそのころに新国立競技場のコンペの話が出て、その勤務先はいちおうロンドンオリンピックの競技場に関わっていたので応募資格もある。「日本のナショナルスタジアムのコンペ、どうですか?」と聞いたんです。僕もちょうど帰るし、「この仕事が獲れたら僕を使えますよ」みたいな話をしたのですが、会社の上司はコンペ要項を読んで、「これは違う」と言ったんです。上司の意図としては、コンペで案が選ばれたとしても、その後のプロジェクトに関われるかどうか怪しい。建築家の責任としてそこを懸念したんだと思います。