迷走する新国立競技場。ザハ案になぜ決まり、白紙撤回されたのか (3ページ目)

  • text by SPORTIVA 日本スポーツ振興センター/AP/アフロ●写真提供

 大学などの専門教育機関としては建築家をたくさん養成したかもしれませんが、専門家以外の人に建築業界はアプローチしてきたか。建築や都市、街並みはあらゆる人に関わる話なのに、やはり日本にはその議論をする土壌が少ないと思う。結局、内向きの議論ばかりで、ザハ案についても業界の中でワーワー言っていたわけです。「彼女に作っていただけるなんて、こんなチャンスはない」みたいな意見もウェブで目にしました。

杉山 山嵜さんはザハ案をどう思いましたか。

山嵜 僕らの世代にとって彼女のデザインは、学生時代から慣れ親しんでいるので、目新しさはない。ただ確かに、五輪招致のために派手な建築デザインを著名な建築家に作ってもらうというやり方があるのは分かります。しかしそれをやるなら、きちんと敷地となる場所や、低成長経済である日本の社会背景などを精査してコンペの初期設定を考えるべきだし、オファーを出すべきだと思います。それなしにコンペを開催してしまった。だから最優秀案に選ばれながら白紙撤回されたザハさんは被害者とも言える。

杉山 建築の世界にはやっぱりヒエラルキーというのがあるんですね。

山嵜 ありますよ。だから槇さんが問題提起をしなければ、もしかしたら粛々と事が進んでいたかもしれません。

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