迷走する新国立競技場。ザハ案になぜ決まり、白紙撤回されたのか (5ページ目)

  • text by SPORTIVA 日本スポーツ振興センター/AP/アフロ●写真提供

 新国立競技場コンペの授賞式の際に僕はザハさんにインタビューをしました。噂には聞いていましたが、天才アーティストみたいな感じで、本当にこういう人がいるんだ、という対応で面白かった。ある意味、聞き手である私は試されていました。でも、それが彼女のやり方でもあるんです。自ら演じ、孤高の人としてブランド化している部分もあると思う。

 ロンドン五輪で彼女は競技場の設計を担当していたんです。最初はすごく大きなものを作ったんだけれども、オリンピックが終わったら市民プールになるんだから、そのサイズは要らないだろう、もうちょっと縮小してやろうと、組織委員会と話し合ったのだと思います。そういうことを東京ではやってなくて、ゼロかイチかになってしまった。彼女はギリギリまで「設計変更したら間に合わない」と発言していた。でも白紙撤回でゼロだと言ったら、「こういうのもできますよ」とか、プロモーションビデオで日本人の感情に訴えかけてきた。しかし、その段階は白紙撤回する前に話し合いをやってなきゃいけないのに、議論ができていなかったのではないでしょうか。

杉山 日本もできないし、ザハさんもできないという感じなんですね。

山嵜 たぶん彼女の中ではすごく余裕を持って怖い顔をしていたんだと思うんです。余裕を持ちながら演じているところがあった。そこは交渉だから戦いですよね。でも変なふうにありがたがっちゃっているから、それが全然うまくできてないという感じがしました。

杉山 結局、ロンドンのプールはどうなったんですか?

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