東京五輪から51年。ガンと闘う「名花」ベラ・チャスラフスカ (5ページ目)
私が彼女の話に聞き入っていると、さらにこう言った。
「オサダが日本からの使者となって、みんなのエネルギーを運んできてくれたので、必ず病気を退治してみせます」。彼女は上体を反らして胸を張った。
「今まで私には本当にたくさんの敵がいたのよ。どんな時代にも次々に敵が出てきたの。だからこの程度のことではへこたれないし、負けませんよ」
チャスラフスカさんは現役引退後、チェコの政権に翻弄され、20年もの間、一切の職を与えられず、不遇な時代を送った。その後の政変で復権し、大統領補佐官まで務めたが、プライベートな事件で元夫が死に至ったことでマスコミから非難を浴び、それにより深く精神を病み、14年間も重い心の病に伏せった。
チャスラフスカさんの話を聞きながら、私はそんな彼女の激流のような人生に思いをはせた。
テラスに西日が傾き、急に気温が下がりはじめた。彼女はプラハ郊外の自宅に帰るという。「タクシーを呼びますか?」と声を掛けると、彼女は路面電車に乗って帰るから大丈夫だという。
5 / 6