東京五輪から51年。ガンと闘う「名花」ベラ・チャスラフスカ (4ページ目)
そして彼女は言った。
「心配してくれて本当にありがとう。私は大丈夫です。病気なんかには負けない。体操という難しいことをずっとやってきたので、それが(病気にも)役立っています。負けません。安心してください。2020年の東京オリンピックには必ず行きますので、そこで会いましょう」
以前と変わらない、とても張りのある声だった。彼女は強がりではなく、何のてらいもなく、ありのままで病気を組み伏せているように見えた。
四半世紀も取材を続けて彼女の心の強さは十分すぎるほど知っているつもりだったが、正直言って、今回会って感じた彼女の強さは、私の想像を遙かに超えるものだった。
少し私がボーッとしていると、スウェットの袖をたくし上げて、肩の近くにある点滴の管を見せた。その管から毎日16時間も薬と栄養剤を注入しているという。「今、口からは食べられないので」とも言った。「少し痩せましたか?」と控えめに尋ねると「ええ、25キロ痩せました」と言った。私は思わず言葉を失ったが、彼女はさらに続けた。
「ここ何年も太っていたので痩せたいとは思っていたけれど、病気で痩せるのは想定外でした。でもそのほかには髪が抜けたりだとか、激しい痛みなどはないの。良い医者に出会えたし、薬も合っているみたい。医者はいつも私の元気な様子を信じられないと言っているんです(笑)」
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