【大相撲】怪物・逸ノ城が大関昇進のために今すべきこと (3ページ目)

  • 福留崇広●文 text by Fukutome Takahiro
  • photo by Kyodo News

 昨年末の横綱審議委員会による稽古総見。協会幹部、横審が勢ぞろいする総見は、横綱、大関陣はもちろん、役力士、幕内上位陣にとって自分をアピールする絶好の機会と言える。ここで逸ノ城は、わずか5番で2勝3敗と、番数も内容もお粗末極まりない醜態を見せてしまった。

 貴乃花も朝青龍も白鵬も伸び盛りの時は、総見ではつらつとした姿を見せ、明日の相撲界を担う力士として存在を見せつけてきた。それが、たった5番とは寂しい限り。北の湖理事長は「あんなの稽古じゃない。下がってばかりで話にならない」と憤慨。協会のトップにこんな評価を受けてしまう現状は、残念ながら、過去の名横綱の姿と重ならない。強い力士は、稽古場で圧倒的な力を見せつけて番付を上げていくのだ。

 今場所、逸ノ城は「相手が研究している」ことを先場所以上に実感している。ならば、対戦相手以上に自分が考え、何よりも稽古を積まなければ先はない。番付は関脇だが、初土俵からわずか7場所目。幕下付け出しデビューだから、ここまでのスピード出世になったが、前相撲からのスタートなら、どんなに早くても幕下上位か新十両のはずだ。貴乃花も白鵬も初土俵から7場所目は三段目だった。

 多くの幕内力士が一番稽古がきつかった時は「三段目から幕下、十両に上がる時」と口をそろえる。つまり、逸ノ城は今、相撲人生の中で最も過酷な稽古を自らに課さなければいけない時なのだ。今の試練は確実に糧(かて)になるし、名力士へのステップとして、必要な時間ともいえる。

 今年の目標に「大関」と掲げた怪物。その願いがかなうか否かは、自分自身にかかっている。その過程を見守りたい。

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