東京五輪女子体操金メダリスト、チャスラフスカさんに聞く (3ページ目)

  • 長田渚左●インタビュー interview by Osada Nagisa 五十嵐和博●写真 photo by Igarashi Kazuhiro

――今度はベラさんご自身がぜひ書いてください。

「私も自分のことを(チェコスロバキアが)社会主義時代に書いたことがあります。しかし100ページぐらい、消されました。その時代ははっきりものを言うことができなかったのです。自分の家族、友達、国に対しての気持ちを書くのもダメだったんです。彼ら(政府)は影響を心配したんです。ソ連について書くこともできなかった。私とラチニナさん(旧ソ連の女子体操選手。56年メルボルン五輪、60年ローマ五輪金メダリスト)との関係も、彼らはスポーツではなく国のシンボルと考えたので、チェコとソ連の関係にしてしまうのです」

――東京五輪のときのライバル、ラチニナさんもお元気ですね。

「私たちの間には競争はあったけど、試合が終わったらお土産を交換したり話し合ったりする仲でした。とても友好的でした。ラチニナさんはお土産にクラシック音楽のレコードを持ってきてくれました。逆に私はチェコからジャズなどのレコードを持っていきました。でも革命後は自由になり、言えなかったことも言うことができるようになりました。私も本を書くつもりがあります」

――話は変わりますが、今年の世界選手権は見ましたか?

「移動のスケジュールの関係で女子のほうがあまり見ることができなかったのですが、男子のほうは見ました。日本には楽しみな選手がいますね。内村(航平)はすばらしいし、田中(佑典)も良かった。美男子ですしね(笑)」

――今回、黒人の選手の活躍も目立ちました。時代が変わってきていると感じますか。

「いろいろな国や人種の選手がやるようになることで、女子も男子も体操はもっと面白くなると思います。また日本についても、今の選手が次の東京五輪に出場するかどうかはわかりませんが、6年ありますからいろいろなことができる。楽しみですね」

――ベラさんは最近の女子体操について、アクロバティックでサーカスみたいだと批判的なことをおっしゃっていますが、未来のためにどうあるべきかというお考えを聞かせてください。

「私の考えというだけでなく、みんなそう思っているのではないですか。海外で議論をすると必ず聞かれます。体操は美しいほうがいいと思います。そして子どもの世界と大人の世界は違います。大人の世界には、愛もあるし、悲しいことも、寂しいこともある。大人はそれらを含めて全部を体操の中に表現できます。子どもにはできません。子どもは指導者の影響が強く、言われたことしかやらない。ロボットみたい。ロボットのようなスポーツは魅力的ではありません」

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る