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「私はもう弱くない」千葉百音が夢の初五輪へ 「ゆづる兄ちゃん」に衝撃を受けた印象的な五輪も明かす

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【屈辱の演技から向き合ってきた自分】

 千葉百音(木下グループ)は12月上旬のGPファイナルでは強烈なプレッシャーに押しつぶされたように、ショートプログラム(SP)首位発進から5位に沈んだ。その屈辱を晴らし、ミラノ・コルティナ五輪代表の座を手にすべく臨んだ全日本選手権(女子シングル/12月19日、21日)では、心の強さを見せた。

 GPファイナル後は、覚悟を決めて練習を積んできたという。

「どんなに不安があっても、どんなに緊張を感じていても、演技は始まる。もうすぐに来てしまうその時に向けて自分がどこまで準備していけるか。それだけに集中して自分のやるべきこと、やるべき動きをしっかり把握してやってきました」

 12月19日のSPは、「自分自身がのびのびとやりたいようにやることを許すというような考え方で挑みました」と千葉。丁寧な動きで3回転フリップ+3回転トーループとダブルアクセルを決める安定感のある滑りだった。

 後半の3回転ルッツはエッジ不明瞭の判定でGOE(出来ばえ点)を伸ばせなかったが、スピンとステップはすべて最高評価のレベル4とした。その得点は74.60点。4位発進ではあったが、納得できるスタートを切れた。

「朝の公式練習では3回転ルッツをミスしたけど、濱田美栄コーチが曲かけ練習のあとに『ミスを練習のうちに出しておけてよかったじゃない』と言ってくださって、ポジティブな気持ちで思いきりいけたところもあります。自分のなかではもっといいジャンプができたなというところもあるけど、まずは乗り越えられた安堵の気持ちを噛みしめました」

 フリーは、完璧に滑りきれたわけではなかった。最初の3回転フリップ+3回転トーループはしっかり加点をもらうジャンプとしたが、GPファイナルで転倒した3回転ループと3回転サルコウは、それぞれ回転不足と4分の1回転不足の判定になりわずかに減点された。

 さらに後半の3連続ジャンプは3回転ルッツがエッジ不明瞭で、最後の2回転ループが回転不足。次の3回転フリップでも減点された。だが、流れは途絶えさせない演技にした。

「ただただ向き合うべき自分の像というか、やるべきことを細部まで見据えました。緊張でそれがかき消されそうになっても頑張って自分を捉え直し、最後まで動けたというのはよかったと思います。ただ前半のループとサルコウのミスは練習でもやっていたものなので、演技が終わった直後は、練習で出ていた悪い癖がそのまま出たなというのが率直な感想でした。後半の3回転ルッツ+ダブルアクセルからは練習どおりに自信を持って跳べたし、本当に私は練習がすべてなんだなとあらためて思いました」

 フリーの得点は4位の141.64点。合計216.24点で総合3位に入り、五輪代表の座を手にした。

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著者プロフィール

  • 折山淑美

    折山淑美 (おりやま・としみ)

    スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。

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