【フィギュアスケート】中井亜美を襲った「あり得ないほどの緊張」 初の五輪へ「自分自身を信じたい」 (2ページ目)
【勝ちではなく演技にこだわる】
12月19日、中井はショートプログラム(SP)で安定した演技を見せている。冒頭、気負わずにトリプルアクセルを降りた。本人は「GPファイナル後は調子が落ちていた」と明かすが、練習でも高い成功率を誇り、確固たる自信が見えた。
3回転ルッツ+3回転トーループで着氷し、3回転ループも難なく成功。スピンもステップもすべてレベル4だった。
プログラム使用曲でイタリア映画の『道』は、ザンパノとジェルソミーナというふたりが織りなす愛と業を描いているが、つかの間、幸せだった瞬間を演出する中井の姿が曲の主人公の生きる力とリンクした。
その成果が、島田麻央、坂本花織のシーズンベストスコア79点台(非公認)にも引けを取らない77.50点だった。堂々の3位スタートだ。
「(GPシリーズ・)フランス大会と同じ緊張感だったので、その流れでいけば大丈夫かなって思いました」
中井はこともなげに言っている。10月のフランス大会、彼女は坂本を抑えて優勝し、それがシンデレラストーリーの序章になったわけだが、勝利のパターン化しているのだ。
「本番になると緊張感で体がこわばって、トリプルアクセルが跳べないことはあって。それを跳ね除けるためにも、練習を積んできました。そこは自信を持って跳べたと思います」
中井はそう振り返り、見かけと裏腹な豪胆さを感じさせた。生来的な気骨か。感情の揺れはあっても、惰弱さは見えない。
「自分自身には緊張していました。大舞台でいい演技ができるか。6分間練習も、一番いい出来ではなかったです。だから、先生のなかにも自分のなかにも不安はあったと思うんですが、それを跳ね除けられたのがうれしかったですね。去年の全日本はよくなかったので、緊張はあったんですけど」
中井は自分を俯瞰し、緊張とうまく折り合いをつけているように映る。それはトリプルアクセル以上の異能かもしれない。同時に、彼女は強運も持っている。ミラノ・コルティナ五輪、同い年の島田麻央が年齢制限で出場ができない一方、早生まれの中井は出場できるのだ。
「麻央ちゃんと一緒に戦えるのはうれしいです。79点台はびっくりしたし、すごいなって。だから先生にも、『麻央ちゃんが頑張っているから、私も頑張ります』って伝えてリンクに出ました」
中井は言う。島田とふたり、新時代を匂わせる。
「麻央ちゃんは4回転やトリプルアクセルを高い確率で跳べて、遠い存在でした。それが一緒に全日本で上位を争えるのはうれしいです。自分は勝ちたいというのはそこまでなくて、それも大事だけど、まずは自分の演技をしたい。そのなかで点数の差も出てくる。お互いが最高の演技をする勝負をしたいです」
17歳の戦いの規範だ。
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