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【フィギュアスケート】三原舞依「感謝を新たなスケート人生でお返ししたい」 ラストダンスは「幸せな光景」だった

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

名スケーターたちのラストダンス 前編

 12月21日、東京。ふたりの女子フィギュアスケーターが現役引退を表明し、国内最高峰の全日本選手権で"ラストダンス"に挑んだ。ふたりとも、10回以上も全日本に出場。それだけでどんなスケーターか、十分に伝わるだろう。万感の思いで滑ったリンクは、祝祭のように輝いていたーー。

最後の全日本選手権を合計190.63点の10位で終えた三原舞依最後の全日本選手権を合計190.63点の10位で終えた三原舞依この記事に関連する写真を見る

【会場は拍手が鳴り響き嗚咽も】

 三原舞依(26歳/シスメックス)は多くの世界大会に出場し、2022年にはGPファイナルで優勝。四大陸選手権でも2度の優勝を果たしている。全日本には11度出場して2度表彰台に立つなど、つねに上位で戦ってきた。控え目に言って、一時代を彩ったスケーターだ。

「命を燃やす」。そんなスケーティングが人気を集めた理由だろう。深刻な体調不良などで、シーズンを棒に振らざるを得ないこともあった。思うように練習できない日々も過ごしたが、くじけずに滑り続けてきた。その渾身は、祈りたくなるような姿だった。

 そして全日本でのラストダンスは、そのスケート人生が丸ごと投影されていた。

「6分間練習からたくさんの声援をいただいて、緊張感もあったけど、すごく幸せだなって思いが強かったです。始まる前にガッツポーズしていたくらいで、うれしさと幸せな思いが私の体すべてを占めていました。『ありがとうございます』って声に出しながらスタートしました」

 冒頭、三原は難易度の高い3回転ルッツ+3回転トーループを決めた。そこからはほとんど神がかっていた。3回転フリップ、ダブルアクセル、3回転サルコウと次々に成功。観客の熱気が沸騰し始める。

 3回転フリップ+2回転トーループ+2回転ループの3連続ジャンプを降り、3回転ルッツ+ダブルアクセルを成功すると、もはや優勝同然の盛況ぶり。見せ場のスパイラルから3回転ループも着氷し、すべてのジャンプを成功した。スピン、ステップ、すべてレベル4だ。

 最後は力を使い果たし、顔を氷につけ、かがんだまましばらく動けなかった。総立ちでの拍手が鳴り響き、どこかで嗚咽(おえつ)が漏れ、あちこちでバナーが振られる。彼女が立ち上がって、観客に向かってあいさつすると、会場には幸せな空気が満ちた。

「幸せいっぱいの競技人生だったと思います」

 三原はそう言ってほほ笑んだ。

「最後のスピンに入ったところから、たくさんの拍手が聞こえて......最後までレベルや回転を気にしながらも、すごくうれしくて。最後のポーズをとったあとは、びっくりするくらい涙がこみあげてきました。ごあいさつの時、前が見えないほどでしたが、上のほうまでお客さんが拍手していてくれて、最後のお辞儀の時に見た幸せな光景は、一生忘れることはないと思います」

 彼女は気持ちをこめて言っている。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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