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鍵山優真が全日本完勝を目指す ミラノ・コルティナ五輪へ向け「正しい選択だったよって自分に言ってあげられるように」 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【五輪で高みを目指すための通過点】

 本番、鍵山は『I Wish』で冒頭から観客を引き込んでいる。4回転トーループ+3回転トーループを完璧に降りる。息をのむように静まっていた場内の空気を打ち破る歓声が上がった。出来ばえ点(GOE)を稼いで、これだけで17.36点を叩き出した。陽気なジャズギターの律動に体を揺らすと、小さな空間に彼の世界を作り上げる。次の4回転サルコウも、静謐なまでのジャンプからの乱れのない着氷で流れが途切れなかった。

 3本目のトリプルアクセルは、「回転を止めきれず、少しバランスを崩してしまった」と本人が説明したように、ベストではなかったのだろう。しかし、「許せる範囲」と言うように成功だった。どのジャンプも安定し、それだけ練習から突き詰めてきたのだ。

 特筆すべきはスピン、ステップがすべてレベル4だった点だろう。とくにスピンの採点は大会のなかで厳しさが目立って苦戦した選手が多かったが、鍵山はお手本のような滑りを見せていた。研鑽の日々が透けて見え、ディテールには圧倒的な本物感があった。

 鍵山はフィニッシュポーズで握り拳をつくったが、すぐに手を広げた。充実した表情だったが、感情を制御しているようでもあった。大事な通過点だが、もっと厳しい戦いが先に待っているのだ。

「今日は落ち着きが、パフォーマンスに出たかなって思っています」

 鍵山はそう言って、こう続けている。

「4年前のオリンピックシーズンは、オリンピックに出るのが最大の目標でした。それも緊張はしたんですが、(年長選手に)追いつきたいって気持ちで、今回は立場が変わって追われる側になって。オリンピックに出ることは最低条件じゃないですけど、オリンピックでいい成績を取るのが目標になっているので、今はその壁を越える通過点というか。やるべきこと、目指すことは、ずっとスケートをやってきて変わっていないので、高みを目指して頑張りたいです」

 鍵山はそう言って、自らを奮い立たせる。

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