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宇野昌磨は解き放たれた表現者 本田真凜、ステファン・ランビエールらとつくる『Ice Brave』で世界観全開 (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【師匠とのコラボナンバーで重なる気配】

 まさに、有言実行のショーだった。練習やリハーサルはかなりハードだったという。それを乗り越えたからこそ、リンクに立った誰もが自然と笑みを洩らしていた。

 師匠ステファン・ランビエールとのコラボナンバー『Legends』では、ランビエールが長い手足を活かし、静謐(せいひつ)だが大胆な印象を与え、宇野は腹から尻、ハムストリングのあたりを軸に、爆発力と安定感が同時に出た。

 それぞれ持ち味は違うが、不思議と気配は重なった。師弟にしかできない律動か。筋肉の収縮がシンクロし、スパイラルやスピンも合っていた。

競技時代に師事したステファン・ランビエールともコラボした競技時代に師事したステファン・ランビエールともコラボしたこの記事に関連する写真を見る

「40歳で、あのクオリティって出せない!」

 宇野はそう言って目を丸くしていた。

 そして『ブエノスアイレス午前零時/ロコへのバラード』、宇野はソロで登場している。「ロコ」はスペイン語で「クレイジー」を意味するが、一つひとつの音を捉えて、上がるテンポを取り込む。全身で情感を表現する彼も、狂気を身にまとっていた。アクセルやトーループなどジャンプも次々に成功し、クリムキンイーグルから最後のスピンまで集中し、表現者の矜持が見えたが......。

「『ロコ』だけソロで、ひとりで滑るのはさみしくて(笑)。同じ方向に向かって、仲間とともにつくり上げるのが、今はやりがいで好きだなって初日が終わって思いました」

 宇野はそう言ってはぐらかし、笑いを誘った。実際、彼は周りのキャストと気持ちを通わせる演技を楽しんでいた。純真な彼のキャラクターで構築された世界だ。

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