坂本花織はNHK杯で壷井達也の演技に「パワーもらった」 圧巻の演技でSP首位 (3ページ目)
【壷井達也の演技を力に変えて】
そしてもうひとつ、彼女は練習から試合までのプロセスで仲間の力も取り込める。個人スポーツのフィギュアスケートで、それは特筆すべき異能だ。
「今日は、一緒に練習してきたタッちゃん(壷井達也)がすごい演技(SP3位)をしたので、自分も精一杯やらなきゃって気持ちになりました。会場についた時は、日本人選手(で男子シングルSPは1、2、3位独占)が残っていたので、いろんな人にパワーをもらって。緊張していたはずが、会場入り後は集中になって切り替えられたと思います」
壷井が何度となく曲をかけ、4回転サルコウを降りられるようになった。それを本番で成功させたことで、坂本も激しく感情を揺さぶられたという。
「映像を見ながら泣きそうになったんですが、泣けへん!って。せっかくメイクしたあとだったので(笑)。でも抑えきれなくて、真下に涙を垂らして......」
周りと共鳴できる彼女のパワーは無尽蔵だ。
「昨シーズンまでは世界選手権3連覇が目標でした。今季は4連覇よりも、来シーズンの(2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ)オリンピックに向けたシーズンと捉えています。今シーズンの1試合1試合が来年に響いてくるので、今は2シーズンをつなげてひと括りにし、取り組んでいるところです。最終の目標はオリンピックだと思っているので」
11月9日、フリー。坂本はミュージカル『シカゴ』より『オール・ザット・ジャズ』を滑る。
「見ている方が乗れる曲だと思うので。みなさんに乗ってもらって、自分もそれに乗れるように」
坂本は最終滑走だ。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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