坂本花織はNHK杯で壷井達也の演技に「パワーもらった」 圧巻の演技でSP首位 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【思い描く姿と現実の差がなくなってきた】

 坂本は『天使の復活/天使の死』のプログラムに自然に入り込んでいる。

 タンゴのリズムに情愛が浮かび上がると、得意のダブルアクセルを完璧に降りた。バイオリンが奏でる音に体を揺らしながら、高難度の3回転ルッツも着氷。ふたつのスピンはレベル3で、喝采を浴びる。スピード感が高まり、3回転フリップ+3回転トーループでは11.96点という高得点を叩き出した。

「今日はルッツが、自分のなかではいいのが跳べました。(プログラムの)真んなかにスピンがふたつ続くんですが、曲のテンポが速くなると、(回る)数が足りないってことがあるんですが、今日は落ち着いてできました」

 そしてハイレベルなステップもやり遂げ、圧巻の出来だった。フィニッシュポーズをしたあと、自らを称えるように頷いていた。

「最初、ステップはメリハリをつけているはずが、自分が思い描いている姿と実際の映像の姿の差がありました。暴れ回っているというか、バタバタと手足を振り回している感じで(笑)。『花織、こんなつもりじゃないねんけどな』って思っていました。それがパートごとの練習で、思い描いている姿と実際の姿の差はなくなってきて。練習を積み、だいぶ思っているように動けているのかなって思います」

 坂本は、自らをスケーターとして別次元に導くことができる。その調整力は傑出。多彩な曲を表現する力にもつながっている。

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