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宇野昌磨「ここで不甲斐ない演技してしまうとよくないな」試合全体を「最高」にするため難易度を下げた構成を選んだ (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【世界選手権はマリニンと戦えるように】

「結果的に勝ちにいっているのは間違いないと思います。僕の考えでは勝ちにいったつもりはなかったかもしれませんけれども、結果的に今の自分の状態と、みんなの点数を見て的確に構成を組み替えたのかなと思います」

 宇野はそう言って苦笑する。その原因は靴の状態にあった。スケート靴が柔らかくなりすぎてジャンプは毎日違う感覚で跳んでいたという。この日、朝の公式練習は感触がよかったが、試合直前の6分間練習ではふだんなら自信を持っているアクセルとトーループがうまくいかず、難易度を下げた構成を選んだ。

この記事に関連する写真を見る 他の選手の練習を見ても調子がよく、ミスができない戦いになると思った宇野。

「ここで不甲斐ない演技してしまうとよくないなっていうのはありました。もちろん自分が勝つことも大切でしたが、ここまで本当に最高の演技で、最高の試合になっていて。ここで僕が大コケして優勝逃すってことも試合のひとつかもしれませんけど、僕もいい演技することがこの試合を最高のものにするとの考えもあった。そこにけっこう焦点を当ててジャンプにいっていました」

 全日本選手権へ向けた練習では、宇野はジャンプへの意識を高めていた。それはグランプリ(GP)ファイナルで一気に高いレベルに駆け上がったイリア・マリニン(アメリカ)の影響がある。「やっぱり競技者として彼と戦いたい」という意識になった。

「本当のことを言えば、僕は表現を頑張りたいです。ジャンプを練習するのは嫌いじゃないけど、ジャンプが今みたいに調子悪くなってしまうと、もうストレスでしかない。フィギュアスケートはやっぱり(表現とジャンプの)両方頑張りたいっていう思いはあるけど、競技をやる以上はジャンプを頑張らなければいけない。楽しいかって言われたら、楽しくない先に楽しいこともあるっていう感想です」

 2024年3月の世界選手権へ向けては意欲をこう口にする。

「この3年のなかで一番難しい優勝というか、戦いになると思います。競技人生のなかで、最高の演技をしなければ勝てないっていうのはわかっている。だからまずは、これからの3カ月間を利用して最高の調整をして。無難な演技をしても2位、3位にしかなれないので、優勝をちゃんと狙える、マリニンくんと戦える練習をしたいなと思います」

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