なぜ宇野昌磨はプレッシャーを超えられるのか? 問題を解決していく王者のアプローチ (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【重ねてきたジャッジ対策】

 最終グループの6分間練習、宇野はリンクサイドに出てきた時から誰よりも体を動かしていた。短い距離のジョグを繰り返し、止まっていない。そうやって、急速に体のスイッチをオンにしていたのだろう。リンクに入ると、間髪入れずにトリプルアクセルを成功させ、トーループも軽々と跳んだ。

「全日本後、スケート靴を変えようと思いました」

 宇野はやや自嘲気味に明かしている。

「自業自得なんですけど、(皮が)柔らかいのが好きなんですが、(変えるのを)先延ばしにしすぎて。毎回、同じ練習ができるようにしないといけないのに、できていません。こっち(長野)に来てからも前日練習、朝の練習、6分間練習とジャンプの感触が毎回、全然違うんで」

 宇野は、本番までにスケーティングをアジャストさせていた。靴だけではない。NHK杯で味わった青天の霹靂のようなジャッジにも、対策を重ねてきた。

 練習からジャンプの比重が高くなったことで、バランスも悪くなったという。完璧を求めてエッジを微調整することで、むしろ悪化した。袋小路に入りかねない。追求する演技とズレもあって、そのストレスで楽しめないところはあったという。

 しかし、立ち戻るべき原点があった。

「ステファン(・ランビエルコーチ)が喜んでくれるかどうか」

 それを揺るぎない基準にすることで、冷静に演技へ向かうことができた。

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