マリニン、宇野昌磨と互角に戦うためにどうする鍵山優真?「今の構成で勝つのは不可能」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

【マリニンと互角に戦えるように】

 NHK杯のフリーは、トリプルアクセルの想定外の転倒や、3回転+3回転が3回転+2回転になるミスもあって182.88点にとどまった。そのミスがなければ190点台半ばまではとれた。そうなれば、合計でも300点に乗せられる。

 SP、フリーともに4回転2本という構成での300点台が見えていたからこそ、GPファイナルで乗せたかった思いは強かった。そんな力みがサルコウの誤差を生んだのかもしれない。

 今季の鍵山は、ケガからの回復途上。GPシリーズ3戦で、最初のフランス杯は300点台に乗せたアダム・シャオ イム ファ(フランス)やマリニンと戦い、NHK杯では宇野と対戦。そして、今回もその3選手と試合をした。そんな経験は自身の現状を把握するための大きな糧となった。トップに上がるための壁や試練を感じられたともいう。

「マリニン選手などを相手に、今の構成で勝ち抜いていくのはまず不可能なのかなと思います。全員がノーミスした時の僕の立場というのは、本当にまだここ(3位)なんだろうな、というのはすごく実感しました。これからもっともっと4回転を増やしていかなければならない。構成も考えるところはあるけど、ジャンプもスピンも全部含めて、GOE(出来ばえ点)を稼げるようにクオリティをあげていくこと、それが僕の唯一のできる部分だと思う」

 北京五輪シーズンのような4回転3種類4本の構成に戻していける状態になりつつある、とも感じている。

「表現も含めて、プログラム全体の余裕をもたせなきゃいけないと思います。やっぱり、4回転と引き換えに表現が失われるというのはよくない。4回転は、今調子のいいフリップにするか、トーループを増やすか、考えどころだと思うけど、4回転をもう1本増やしても今のクオリティで演技ができるぐらいまで、経験と練習を積み重ねていけいかなきゃいけない」

 自分のペースで成長している、と鍵山は話す。

「世界選手権に出ても、マリニン選手とは本当に互角に戦えるようになるくらいまで練習を積まなきゃいけないなと思います。だから4回転を増やすことも視野に入れ、覚悟を持って練習していきたい。まだどうなるかわからないが、世界選手権に出られるならそこでは何かしらを挑戦したいなと思います」

 シニア移行1シーズン目の世界選手権で2位になり、2シーズン目は北京五輪と世界選手権でともに銀メダルを獲得して世界のトップレベルに駆け上がった。それからケガによる1年間のブランクはあったが、再びトップへ向けての戦いを再開した。

 宇野とともに日本のフィギュアスケート男子をけん引しなければいけないという自覚も、明確に鍵山のなかに芽生えてきているはずだ。

著者プロフィール

  • 折山淑美

    折山淑美 (おりやま・としみ)

    スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。

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