宇野昌磨がNHK杯で収穫 ジャンプ採点基準にベテラン記者は「大会によってバラバラな面も」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【「先はないな」と思わされる採点基準】

 だが、キス&クライで得点が表示されると、表情は変わった。演技終了時点で表示されていた技術点の速報値は106.98点だったが、正式な採点では94.94点になっていた。跳んだ4回転ジャンプ4本がすべて4分の1の回転不足と判定され、GOEは3本が0点で4回転トーループ+3回転トーループが+0.27点となっていたからだ。

 フリーの結果は、186.35点で1位だったが、合計は286.55点にとどまり、中国杯に続く2位という結果。ポイントランキング5位でGPファイナル進出を決めたものの、表情は晴れなかった。

「ジャンプはけっこうきれいかなと思ったんですが、まさかループとトーループも......。あんまり覚えていないんですけど、判定が厳しかったなというのは感じています。ただ、判定は人がやるものだし、それをつけるのも人それぞれなので。回転不足をつけるのはどうなんだ、という気持ちでもないんですけど、ただ本当に言えるのは、今日のジャンプ以上のものを練習でもできる気はしない。もし、これが今後の基準になるなら、ここが僕の限界で、これ以上先はないなと思わされる試合だったなと思います」

 今回は回転不足の判定が厳しかったのは確かだ。女子のフリーでも出場12人中、優勝したアバ マリー・ジーグラー(アメリカ)以外の11人は4分の1の回転不足やアンダーローテーションをとられていた。

 きちんとした判定は、スポーツである限り必要不可欠だ。そして、その基準を明確にしなければいけない。だが、フィギュアスケートの現状では大会によって判定基準はバラバラな面もある。

 また、各ジャッジのGOE加点や演技構成点の付け方にも、大きな差があるのが目立っている。0.01点を争う競技だからこそ、その基準を明確にしなければ、選手自身が正解をわからず迷いを生んでしまう。今回の宇野の判定には多くの関係者も疑問の声を上げていたが、改善に向かうことを願う。

 それでも、宇野は「ちょっと気持ちを揺るがされるような試合だったと思いますが、今日の演技が悪いものだったとは、自分のなかでは捉えたくない」と話した。

 そして一夜明けたあとの取材では、「中国杯からの短い期間のなかですごくいい調整をしたうえで、やってきたことをしっかり体現できた試合でした。いいというのはこういうものでしかないと言える演技をできたと僕は思うので、次のGPファイナルへ向けても引き続き同じような練習をしていきたいです」と述べた。

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