三原舞依は逆境をエネルギーに コーチの言葉を力に「こんなところで終わったらあかん」 (2ページ目)
【「耐えろよ」の呪文】
11月24日、三原はショートプログラム(SP)で10番目に登場している。スケーターの紹介アナウンスが場内に流れると、この日、一番の熱気が湧き上がった。彼女も感化されたように、表情を輝かせた。
「舞依ちゃん、がんば!」
その声援が起こるたび、活力を与えられたように体を弾ませた。
「6分間練習の前から温かい声援を受け、なんて幸せなんだって。今の自分にできることを出すことで、想いに応えたいと思いました。自分のスケート人生を思い返し、ケガでは終われない。ここからカムバックするって」
スイッチが入った。ジェフリー・バトル振付けで、セリーヌ・ディオンの『To Love You More』の世界に入り込む。
<耐えろよ>
右足首には呪文をかけた。
冒頭のダブルアクセルを成功させると、続く3回転フリップ+2回転トーループ、3回転ルッツと回転不足はあったが、確実に降りた。コンビネーションジャンプはセカンドに強気で3回転を予定していたが、一瞬の判断で構成を下げ、ギリギリのラインを狙った。ステップシークエンスでは、バレエジャンプから情感豊かな曲のテンポに乗り、ラストのレイバックスピンで観客を陶酔へ引き込んだ。
SPのスコアは62.82点で4位。コンディションを考えたら上々のスタートだ。
「大事に滑れたかなと思います。まだまだ、こうしたい、ああしたい、はたくさんあるんですが、中国杯に出られなくて悲しくて悔しくて。NHK杯は出ることができて、初戦としてはよかったです」
三原は安堵したように言い、こう続けた。
「小さな頃からお世話になっている(中野園子)先生との信頼もあって、今日まで来られました。先生には『舞依はできます』って励ましていただいて、『こんなところで終わったらあかん』って。練習でダウンした時も、『三原舞依はこんなもんじゃない』って言ってくださったのが心の支えで、その言葉どおりに滑って乗り越えられたのかなって」
彼女は逆境をエネルギーに変換していた。
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