山本草太は急成長のマリニンに追いつけるか? 約50点差をつめるポイントは? (3ページ目)
【イリア・マリニンとの大きな差】
競り合いを制して手にした今回の優勝の意味は大きい。だが、前週のスケートアメリカでイリア・マリニン(アメリカ)が310.47点で優勝していただけに、少し不満の残る結果でもあった。
山本の演技の内容を見れば、SPは、ジャンプやスピンのミスはさることながら、自己最高得点の96.49点を出した昨季のNHK杯と比べればまだまだだ。演技構成点では、昨季は常に8.3点台だったスケーティングスキルが今回は7.96点にとどまり、他の2項目も7点台。フリーではすべての項目で8.39点になっていることを考えれば、NHK杯の時より評価は高くなっていて、実力的にはSP100点に近づいているだろうが、その力を出しきれずに終わっている。
フリーではマリニンとの差はまだまだ大きい。マリニンは4回転が4本あるうえに、後半に4回転の連続ジャンプ、3回転ルッツ+トリプルアクセルという大きな得点源になるジャンプを並べている。さらにマリニンは課題だった演技構成点も、3項目すべてを8点台後半にする進化を見せている。
そんな状況ではあるが、今回の演技構成点を見れば、山本の評価も高くなっているのは確か。自己最高得点の179.49点だったファイナルではスケーティングスキルは8.36点だったが他は7.46点と7.79点。今回のスケートカナダは、ミスがある演技でありながら、コンポジションで7点台をつけたジャッジはひとりだけで、プレゼンテーションは全員が8点台だった。
現状の山本の演技は、前半の4回転が続く部分はジャンプを跳ぶための構えが少し長すぎ、流れが少し途絶えてしまう部分がある。その部分を改善してくれば、現在では2〜3点というGOE評価を4点に高め、技術点も伸ばせるだろう。さらに演技の流れをつくれれば、おのずと演技構成点も伸びていくはずだ。
山本が進化を続けるマリニンに追いつくためには、流れの改善とともにノーミスの演技を続けて自信をつけることも必要だろう。今回の初勝利で得た自信を心の余裕を生み出す糧にして、彼の持ち味である伸びのある滑りを存分に見せてくれることに期待したい。
著者プロフィール
折山淑美 (おりやま・としみ)
スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。
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