羽生結弦の鬼気迫る演技に会場に起こった密やかなざわめき「迫力と予想外の展開に驚愕するよう」【ファンタジー・オン・アイス レポート】 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao/Fantasy on Ice 2023

●鬼気迫る演技に会場はざわめき

 今回はそれから1カ月半の時間をとっての公演。4回転トーループの着氷を乱した時には少し悔しそうな表情を見せていたが、体の状態はよさそうで、キレのある滑りを見せた。

 照明を落としたなかでリンクに登場し3回転ループを軽やかに跳んだ羽生は、まだ曲が始まらない暗いなかで、いきなりキャメルスピンをして演技を始めた。そして、曲が始まって照明が灯ると、キレのいいダンスで観客席を圧倒する。

 静止した状態から手足を激しく踊らせ、ISSAの歌声だけではなくパーカッションの鋭い音にもピタリと合わせ、さらにはラップの音もしっかり拾って休む間のない緩急の効いたダンスだった。

 そのなかですばやいターンのあとでその流れに溶け込ませたような、フワッと跳び上がる3回転ループを入れる。さらに後半にも3回転ループを跳び、スピンとともにすべての動きでひとつのプログラムをつくり上げるような演技を見せた。

 最後は鬼気迫るような激しい演技のなか、体ごと落下するような動きで両足を前後に180度開脚し、ピタリと止まっていきなりの終演。その迫力と予想外の展開に驚愕するように一瞬静まった観客席からは、迫真の演技を見た喜びが、密やかな歓喜の声となってざわめいた。

 3分38秒+αのその演技は、それだけでファンタジーの観客席に来た人たちを納得させ、満足させるほどの滑りだった。

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