フィギュアスケート中田璃士は次世代のエース候補。小学生時から注目株で衣装や表現にも強いこだわり (2ページ目)

  • 山本夢子●文 text by Yamamoto Yumeko
  • photo by 日刊スポーツ/アフロ

「戦国時代」から抜け出せるか

 2020年、ノービスAクラスに上がるとジャンプだけでなく「(自分の強みは)表現です」と話すように。無観客試合ではあったが、ジャッジや関係者など見ている人を意識した滑りにはアイスショーで培った表現力が活きていた。翌年10月の同クラスでは102.06点というハイスコアで優勝。しかし、推薦で出場した11月の全日本ジュニアではフリーでミスが相次ぎ、演技後は涙が止まらなかった。世代のトップを走っているからこそ、うれしい思いも、悔しい思いも経験してきた。さらに上を目指すために練習を重ねるなかで、ケガにも悩まされた。

 ジュニアデビューとなった今季、中田は腰痛を抱えていた。9月、2位で表彰台に乗ったジュニアグランプリ(ラトビア大会)は、腰の痛みと戦いながらの試合だった。一度は回復したものの、11月、全日本ジュニアへの予選となる東日本選手権大会前に再び痛み始めた。演技中にも痛みを感じたそうだが、「痛いなかでもきれいに決められてよかったです」とホッとしたような笑顔を浮かべた。

 現在、日本男子は選手たち自ら「戦国時代」と言うように、誰が表彰台に上がるのか読めないほど層が厚い。中田が憧れる宇野昌磨、鍵山優真を筆頭に、グランプリファイナル銀メダリストの山本草太や世界選手権代表の友野一希、全日本選手権2位の島田高志郎、グランプリファイナルに進出した佐藤駿、三浦佳生などがひしめき合い、海外の試合では表彰台に乗れても全日本の表彰台に乗ることは難しい状況だ。

 そこに今後は今季ジュニアグランプリファイナルに進出した全日本ジュニア王者の吉岡希、片伊勢武アミン、中村俊介の世代が加わり、中田璃士や田内誠悟らの世代へと続いていく。中田は現在14歳。フィジカルもメンタルも、ここからどんどん成長していく年齢だ。「2030年のオリンピックに出て、金メダルを獲得したいです」という将来の夢に向かって、ケガなく笑顔で成長し続けていってほしい。


【プロフィール】中田璃士(なかた・りお)
フィギュアスケート選手(男子シングル)。2008年9月8日生まれ、イギリス出身。父でコーチでもある誠人さんも元フィギュアスケートの選手。母はイギリス人。全日本フィギュアスケートノービス選手権大会で3連覇(2019~2021年)。100点を超えるスコアも達成した。今季は東日本選手権で優勝し、全日本ジュニア選手権に出場(5位)。推薦選手として、全日本選手権にも出場した(フリーには進めず)。

【筆者プロフィール】山本夢子(やまもと・ゆめこ)
スポーツライター。青森県八戸市出身。小学校2年生から高校卒業までフィギュアスケート選手として各大会に参加。その後、渡米し大学を卒業、就職。帰国後は、コピーライターとして広告制作に携わる。2005年からフリーランス。現在はライターとしてフィギュアスケートの専門誌を中心に執筆中。

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