宇野昌磨、鍵山優真の「2強」を崩せるか。全日本フィギュア男子は苦労人・山本草太ら「第3勢力」の戦いが見もの (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【山本草太、三浦佳生はフリーがカギ】

 そんな山本に迫る力を持っているのが、今季がシニア本格移行ながらも、GPシリーズでは2戦連続で2位になり、GPファイナルに初進出した17歳の三浦佳生(オリエンタルバイオ/目黒日大高)だ。GPシリーズ出場は当初はスケートカナダのみの予定だったが、その前週のスケートアメリカ出場も急きょ決まった。

 三浦は、中学時代から4回転を跳んで注目されてきた選手。昨季から4回転サルコウと4回転トーループが安定し始め、全日本選手権4位で四大陸選手権3位とシニア大会で結果を出した。左太ももの肉離れで実現はしなかったが、世界選手権も欠場した羽生結弦の代役で出場する予定になっていた。

 そして、フリーで4回転ループに挑戦し始めた今季は、サルコウとトーループの安定度が増した。準備期間が短かったスケートアメリカでもその成果を発揮して4回転2本を含むジャンプをすべて決め、タイムオーバーの減点1はあったが94.96点を獲得。四大陸選手権優勝で北京五輪5位のチャ・ジュンファン(韓国)を0.52点抑えて1位発進をした。

 記者会見では「体がすごく動いていて自信を持っていますが、『なんでここに自分がいるんだろう』という感じです」と苦笑した三浦。

 フリーでは、最初の4回転ループで転倒し、最後のスピンは「疲労もあってスタミナがなくなり止まりそうだった」とは言うが、中盤でミスをした3連続ジャンプを最後の3回転フリップにつけてリカバリーをする粘りも見せた。得点は自己最高の178.23点。4回転アクセルを含む4種類5本の4回転を跳んだイリア・マリニン(アメリカ)には逆転されたものの、自己最高の273.19点で2位になった。

 さらに宇野との対戦になった翌週のスケートカナダでも、SPは94.06点で1位発進。フリーは6分間練習で靴ひもが切れるアクシデントがあって4回転ループは回避したが、ミスをふたつだけに抑えて合計265.29点で宇野に次ぐ2位。ファイナル進出を決めた。

 初出場のファイナルではSP、フリーともにミスが出て5位にとどまったが、アメリカとカナダの勢いを見れば、ベースを270点台にしたことは間違いない。

 山本、三浦ともにSPはノーミス発進としてくる可能性は高く、勝負の分け目はフリーとなるだろう。山本がGPファイナル2位の自信を、そして三浦が若さと勢いを糧にして、全日本選手権で自己最高得点を上回ってこられるかに注目したい。

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