宇野昌磨「自分から逃げる演技だけはしたくない」。足首を負傷も「いつもどおり」と5度目の全日本優勝を目指す
12月22日、全日本選手権の公式練習に臨む宇野昌磨この記事に関連する写真を見る 12月22日、さいたま。全日本フィギュアスケート選手権の前日公式練習で、宇野昌磨はひとりだけマスクを付けたままリンクに入った。2周ほどで、ゆっくりとピンク色のマスクを取り外した。間もなく体が温まったのか、高いジャンプでトリプルアクセルを着氷したあと、手応えを感じたように白い上着を脱いでいる。上下カーキのジャージ姿になると、風に前髪をなびかせながら、入念に滑り込んだ。
「どの試合でも成長できるように」
それを理念にする宇野は、渾身で勝負の準備をしていた。
曲かけ練習は、ショートプログラム(SP)の『オーボエ・コンチェルト』だった。曲が終わると、すぐにリンクサイドに立つステファン・ランビエルコーチのもとへ駆け寄っている。着地の姿勢に関する話だろうか、動作を確認するような身振り手振りで、宇野はアドバイスを集中して聞きながら、小さく何度も何度もうなずいた。
この日、宇野はいつも以上に、ランビエルと言葉を交わしていた。他の選手が曲かけを終わるたび、もしくはそれ以上の回数だった。何かを確かめていたのは歴然で、最後には納得した笑みをもらしていた。
「積み重ねがあったんだ、と安心しました」
宇野は練習後のリモート取材で意味深長に言ったが、そこに彼の「今」が集約されていた。
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