2021.12.23

宇野昌磨「自分から逃げる演技だけはしたくない」。足首を負傷も「いつもどおり」と5度目の全日本優勝を目指す

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

12月22日、全日本選手権の公式練習に臨む宇野昌磨12月22日、全日本選手権の公式練習に臨む宇野昌磨 この記事に関連する写真を見る  12月22日、さいたま。全日本フィギュアスケート選手権の前日公式練習で、宇野昌磨はひとりだけマスクを付けたままリンクに入った。2周ほどで、ゆっくりとピンク色のマスクを取り外した。間もなく体が温まったのか、高いジャンプでトリプルアクセルを着氷したあと、手応えを感じたように白い上着を脱いでいる。上下カーキのジャージ姿になると、風に前髪をなびかせながら、入念に滑り込んだ。

「どの試合でも成長できるように」

 それを理念にする宇野は、渾身で勝負の準備をしていた。

 曲かけ練習は、ショートプログラム(SP)の『オーボエ・コンチェルト』だった。曲が終わると、すぐにリンクサイドに立つステファン・ランビエルコーチのもとへ駆け寄っている。着地の姿勢に関する話だろうか、動作を確認するような身振り手振りで、宇野はアドバイスを集中して聞きながら、小さく何度も何度もうなずいた。

 この日、宇野はいつも以上に、ランビエルと言葉を交わしていた。他の選手が曲かけを終わるたび、もしくはそれ以上の回数だった。何かを確かめていたのは歴然で、最後には納得した笑みをもらしていた。

「積み重ねがあったんだ、と安心しました」

 宇野は練習後のリモート取材で意味深長に言ったが、そこに彼の「今」が集約されていた。