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宮原知子はリンクで気品が滲む
稀代のスケーター。「前を向いています」 (4ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 演技後、彼女は茫然とした様子で、必死に言葉を探っていた。丁寧に真摯に伝える。それは彼女の人となりだ。

 しかし、強張った顔にも真実はあった。

 宮原は、勝負への実直さを感じさせる選手である。2018-19シーズン、全日本で3位に甘んじた時、彼女は小さな声でこう洩らしていた。

「フリップだけが悔しくて、時間を巻き戻したい......」

 そして今回の全日本も、宮原は悔しさを隠せなかった。

「あれだけ練習ではできていたのに、どうして本番になるとできないんだろうって......」

 その勝負魂がなかったら、女子フィギュアを牽引できなかっただろう。

 五輪でメダルを争い、全日本4連覇を成し遂げ、「ミス・パーフェクト」と愛され、疲労骨折から回復して第一線で戦い続けることは、責任感が強く、自分に厳しい選手でなければできない芸当だ。

 宮原はリンクの上で光の衣をまとう。追求する演技ができるようになった時、それは芸術品として記憶される。そこに滲む気品こそ、彼女の世界の本質だ。

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