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羽生結弦、チェンとの戦いは「楽しみながら強くなっていきたい」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 フリーに関してはまだ確定ではないが、今回のルッツを入れた4回転5本の構成を「たぶんこれがベースになっていくと思います」とも話していた。ただそれは、勝負の時のための特別な構成ということだろう。そのために氷のコンディションを見ながら、SPやフリーに4回転ルッツを入れ、その確率をしっかり上げていく必要もある。さらに挑戦中の4回転アクセルというオプションもある。

 それに加え、基礎点が1.1倍になる終盤3本のジャンプに今回トリプルアクセル2発のシークエンスを入れようとしたように、連続ジャンプが1本のチェンに対して、トリプルアクセルを2本組み込み、3本すべてを高得点が獲得できる連続ジャンプにしようという強いこだわりを持つのも羽生の強みだ。

「4回転アクセルを含めた高難度のジャンプと、プログラムとしての完成度の両方を求めるというのは厳しいと思うし、それは僕も十分に承知しています。ただ、演技構成点に関しては、コンビネーションをもっと難しくしたりつなぎの部分をもっと増やしたり、スケーティングをもっと丁寧にして表現も高めたとしても、たぶん5点もらえるかもらえないかだと思います。だから、そこまでこだわり続ける必要があるのかと言われると、もしかしたら今日みたいにジャンプに集中して、全部でGOEを稼げるようにした方が点数的にはおいしいかもしれない。でもそれでは僕の中で、スケートをやる意味にはならないんですよね」

 熱を込めた表情で自身のこだわりを話した羽生は、記者会見で何度も「隣にいるネイサン選手がすばらしい演技をしなければ、こういう風に学ぶことができなかったと思うし、強くなろうと思うこともできなかった」と、チェンの存在に感謝する言葉を口にしていた。

 好敵手だと思うからこそ力を思い切り振り絞って、神経を削り合うような戦いをしたい。そんな思いが強烈にあるからこそ、羽生はさらなる進化を目指している。パトリック・チャン(カナダ)やハビエル・フェルナンデス(スペイン)に続く強力なライバルに今また出会えたことに、彼は感謝しているのだろう。

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