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敗れた女王ザギトワが見せたプライド。
「見ていて幸せになる演技を」 (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 厳しい戦いとなったが、五輪女王としての自負がある17歳は、決してあきらめない強気を最後まで見せていた。

 ザギトワがシニアデビューしたのは、平昌五輪シーズンだった2017-18シーズン。まだ2年前のことだ。15歳で鮮烈なシニアデビューを飾ったザギトワは、当時のルールを最大限に活用した演技構成に挑んだ。SPもフリーも、すべてのジャンプを基礎点が1.1倍になる後半に組み込むプログラムで、GP2連勝をはじめ、GPファイナル、ロシア選手権、欧州選手権、平昌五輪と、出場したすべての大会を制覇。一気にスターダムにのし上がる大活躍を見せた。

 ルールが大きく改正されて、後半につくボーナス点が制限されることになった昨シーズンも、世界選手権では見事に初優勝を成し遂げた。五輪や世界選手権を制しても浮かれることなく、ストイックにスケートに取り組む若き女王の誕生に、ザギトワ時代が続くと思った人も多かったはずだ。

 だが、トップの座はあっという間にさらわれた。シニア3年目の今季、GPシリーズでは1勝もできなかった。ザギトワが指導を受けてきたエテリ・トゥトベリーゼコーチが率いる同門の後輩3人がシニアデビュー。トリプルアクセルの大技をひっさげた後輩コストルナヤに、フランス杯に続いて2大会連続で敗れたのだ。

 センセーショナルな活躍を見せる後輩たちを横目に見ながらも、自身がやるべき演技をぶれずに貫いていることは、演技構成の内容からもわかる。たとえばそれは、ザギトワの武器でもある連続ジャンプの2つ目のジャンプに3回転ループを跳ぶことだ。回転不足になるリスクが高い大技であるが、15歳の時よりも身長が伸び、体重も増えて体つきも女性らしくなっても、自分のプライドを保つようにプログラムに組み込んでいる。飽くなき向上心と勝利への貪欲さを垣間見せるこの姿勢には、感嘆さえ覚える。

 今季前半戦の2大会でのコメントから推察すると、おそらく、これからもザギトワが4回転やトリプルアクセルの大技ジャンプに挑むことはないだろう。だからこそ、ザギトワは自分が何を目指すべきかを明確に持ってスケートにまい進しているのだ。

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