2019.11.28

敗れた女王ザギトワが見せたプライド。
「見ていて幸せになる演技を」

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

NHK杯フリーで3位となったアリーナ・ザギトワの演技 フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ最終第6戦のNHK杯女子フリーはトリプルアクセル対決となった。結果は、今季シニアデビューしたロシアの新星アリョーナ・コストルナヤが初優勝を成し遂げ、昨季GPファイナル女王の紀平梨花が2位に終わった。そして、その2人に話題をさらわれた格好となったのが、平昌五輪女王のアリーナ・ザギトワ(ロシア)だった。

 失敗が許されないショートプログラム(SP)でジャンプミスをして4位と出遅れたザギトワは、同門の後輩コストルナヤの活躍を目の当たりにして、自身の不甲斐ない演技に気落ちした様子が見られた。SP直後の舞台裏では、険しい顔を見せながら、報道陣を前にこう話していた。

「(SPの演技は)アドレナリンが足りなかった感じです。こういった失敗は今までも、平昌五輪でもしてきました。同じような大きな失敗している私には(SPからの逆転優勝や挽回の)経験があります。フリーの『クレオパトラ』は見事に演じたいと思います」

 そのフリーでは公約どおり、見事な演技を披露して、スタンディングオベーションを浴びた。審判の評価では回転不足やレベルの取りこぼしはあったが、一見してその演技はほぼ完璧だった。それでも、ザギトワ本人は笑顔を見せず、キスアンドクライに座って得点を静かに待っていた。

 フリーの結果は、昨季まで世界最高得点だった158.50点(2018年ネーベルホルン杯2018で出した)の自己ベストに7.35点及ばない151.15点をマークして3位。合計では、こちらも昨季までは世界最高得点だった238.43点の自己ベストを20.44点も下回る217.99点で、総合3位にとどまった。

「フリーの演技はとても満足しています。SPで納得いかなかったので、フリーへうまくつなぐことができてとてもよかったです。もちろんSPのあとは、4位になったことでとても落ち込みましたけど、コーチの皆さんがとても温かい言葉を掛けてくださいましたので、気持ちを落ち着けて(フリーの)今日1日に取り組むことができました。そしてフリーでは、ひとつのエレメントからもうひとつのエレメントへと落ち着いて滑ることができたと思います」