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フィギュア団体の滑りで見えた、
宇野昌磨のシングル金メダルへの道 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by JMPA(Noto Sunao)

 さらに、続くペアSPでは、須崎海羽・木原龍一が自己ベストの57.42点を出して8位(3点)に入り、初日のポイントを13点に伸ばしてカナダ、アメリカに次ぐ3位につけた。11日の女子SPとアイスダンスの結果で上位5チームに入ると、ペアと男女のフリーが行なわれる決勝に進むことができるが、前回大会の5位を上回る可能性も見えてきた。

 その足がかりを作った宇野は、初めての五輪の舞台にも特別な感情を抱くことはなかったという。

「フリップは自分では失敗したかなと思ったけど、気づいたら立っていたというか......。こらえていたので覚えていないんです。それ以降も立て直せたという実感はなくて。これは、うまくいったから言えることだと思いますけど、練習してきたことを信じた結果だと思います。本当に、何も考えず思い切り跳ぶだけでした」

 前の選手の失敗による若干の動揺があったとはいえ、宇野は緊張することなく演技に集中することができていたのだ。

 宇野の団体SPでの1位発進は、2014年のソチ五輪を彷彿(ほうふつ)とさせる。そのときは、羽生結弦がノーミスの演技で97.98点を出してエフゲニー・プルシェンコ(ロシア)やパトリック・チャンを抑えてトップに立ち、シングルでの金メダルにつないだ。

 日本スケート連盟の小林芳子フィギュア部長は、「前に滑った若い選手たちが五輪を意識しすぎていたせいかバタバタしていたので、『(宇野も)ミスをしてもいいか』くらいの気持で見ていました。あの状況のSPで、100点を超えたのは収穫。これで戦う準備ができたと思います」と期待を口にする。

 シングルで最大のライバルとなるだろうアメリカのネイサン・チェンは、公式練習からジャンプが本調子ではなかった。団体戦のSPでは冒頭の4回転ルッツをフリップに変えてきたが、その4回転フリップで着氷を乱し、セカンドは2回転トーループをつけるだけにとどまった。さらに、後半に入ってからの4回転トーループはパンクして2回転になり、得点なし。その後のトリプルアクセルも転倒するなど、80.61点で4位に沈んでいる。

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