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怒りを集中力に変えて。羽生結弦が見せた絶妙のメンタルコントロール (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao

 こう話す羽生は、試合直前の6分間練習から気合十分だった。ひとつひとつしっかり確認するように、トリプルアクセルから4回転トーループ+3回転トーループ、4回転サルコウをきれいに決め、終了直前にはもう一度サルコウへ入るコースを確認してリンクから上がった。そして、本番でも最初の4回転サルコウをGOE(出来ばえ点)3点の完璧なジャンプにすると、次の4回転トーループでは着氷で少し尻が下がってしまったが、危なげなく3回転トーループを付けた。

 おそらく、今回が最後の演技になるであろう『バラード第1番ト短調』。ソチ五輪で『パリの散歩道』を、すべてを手の内に収めたかのように自信を持って滑った時と同じように、羽生はこの曲のすべてを自分の体にしみ込ませているようだった。

 得点は、昨年12月のグランプリファイナルで出した自己最高得点に0・39点及ばないものの、2位につけたハビエル・フェルナンデス(スペイン)に12・04点差を付ける110・56点。圧巻の結果だった。

 それでも、終盤のステップについては、本人が「冷静さより他の感情が勝っていたと思う」と言うように、荒々しい自分の気持ちが発露するあまり、感情を抑えきれていない滑りにも見えた。

 そう問いかけると羽生は一瞬苦笑し、「ちょっと意地でレベル4をとりにいきましたけど、ダメでしたね。何かもうちょっと頑張れるところがあるのかなと思っているんですけど、それもまた(課題ができて)うれしいところなので......。しっかりやりたいです」と話した。

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