現役続行の浅田真央。待ち受ける現実と引き受ける覚悟 (3ページ目)
もちろんその魅力はジャンプだけではない。カナダ人振付師ローリー・ニコル氏らに支えられ、弱点だった表現力とリズム感をカバーし、長所だったはつらつさやキュートさを強調するプログラムによって、魅せる演技ができるまでになった。その集大成ともいえるのがソチ五輪のフリー演技で、記録としてはメダルには届かなくても、強烈な記憶を残したのは間違いない。
国民的アイドルとして一スケーターを超越した存在にまでなった浅田が、1年間の休養後に出した答えは、現役選手として試合に出場することだった。ただし、まだ試合に出られるレベルではないという。休養前まで指導を受けていた佐藤信夫コーチに相談をしたのが3月。5月に入って試合に復帰するための練習を始めたばかりだ。
来季のルール変更でジャンプの厳格化がさらに増してくる可能性もある中、現役続行は彼女にとって過酷な道のりになるだろう。それでもスケートの基本を徹底的に指導し続けた佐藤コーチは「彼女のスケートはまだ道半ば」と、まだそこに伸びしろがあることを確信していた。
「ハーフハーフ」だった彼女自身の気持ちは、1年後、「今こうして決断して、試合に向けてやっている気持ちは100パーセント復帰するつもりで練習しています。できるんじゃないかな、できないんじゃないかと思うときもあったけど、今は100パーセント、試合に出るつもりでいます」と固まった。その言葉の数々からは、待ち受けている現実を引き受ける覚悟と、フィギュアスケートへの愛着がうかがえた。
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