シーズン前半のトラブル解消。村上佳菜子が四大陸選手権で見せた「大人への成長」 (2ページ目)

  • 青嶋ひろの●取材・文 text by Aoshima Hirono
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 今回特に印象に残ったのは、ショートプログラムの「ヴァイオリン・ミューズ」。

「全日本の前に靴を替えてから、調子がどんどん良くなって、ショートは全日本も今回も、うまくいきました! いつもは、『わ、試合だ』って気持ちになるけれど、名古屋でもいっぱい曲をかけて練習してきたので、自信があったんです。そのおかげでずいぶん落ち着いて、『試合だ』って気持ちにもならなくて、練習どおりの演技。もう中京大学のリンクで滑っているような感じでした(笑)。あとは苦手なアクセルだけに集中して、ステップは思い切りやろう!って。ショートプログラムは、だいぶ自分のものになったかな」

 氷から降りれば、ニコニコと明るい笑顔で自身の演技を語る17歳だけれど、氷上の村上佳菜子は完璧な「芸術家」だった。ショートプログラムのテーマである「苦難」「葛藤」を、これ以上ないくらいの凛々しさ、美しさで形にして、見る人にため息をつかせた。

「今年は大人の佳菜子!」を目標に選んだ曲だったが、「大人への成長」という以上にもっと劇的な表現の変化を、このショートプログラムでは見せることができたようだ。

 しかしフリーでは、打って変わってスピードもなく、滲み出る感情もおとなしめ。フィニッシュの後には両ひざに手をつき、へたり込みそうになっていた。体調不良でむかえた高地での試合は、本当にきつかったのだろう。

「演技が終わってすぐ、あいさつをする前に下を向いちゃったことは、山田先生に言われたんです。『苦しくても、キス&クライ(得点発表を待つ場所)に行くまで(ほかの選手は)我慢して普通にしているのに、あんなことをして......』って......。あの時は本当にきつくてあんなふうになっちゃったけど、今考えると、自分でもダメだったな、って思います」

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