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【女子プロレス】暁千華は「令和のクラッシュ・ギャルズって呼ばれたいわけじゃない」 19歳が抱く覚悟と大いなる目標 (2ページ目)

  • 尾崎ムギ子●取材・文 text by Ozaki Mugiko

 ラスト1分のコールが響く。その声とほぼ同時にカウント3。暁の勝利を告げるゴングが鳴った。

 長与がリングに上がり、マイクを取る。

「ひとつだけ忘れないでほしい。人から一本取ることが、どれだけ尊くて、どれだけ大変なことか、今日おまえ(暁)はよくわかったはずだ。そして取られることが、負けることがどれだけ悔しいか、おまえ(宝山)はわかったはず。勝つことも難しいけど、負けることも難しいから。そんな思いでリングに上がってほしい」

 勝利した暁は、試合後、Xでこうポストした。「あんまりうれしくなかった。勝つってなんだろう」。初勝利のあとに放ったとは思えない、その言葉。なぜ彼女は、勝ったのにうれしくなかったのか。

「押さえ込みルールで勝ちました。愛さんが負けました。でもあの時、注目されたのは愛さんだったんです。勝ったには勝ったけど、『ただ勝てばいいっていうもんじゃないんだな』と思いました。全然喜べないし、しんどい試合でした」

【"紅の継承者"対決を目の前で見て思ったこと】

 3月11日、マリーゴールド新宿FACE大会。マーベラスとマリーゴールドの全面対抗戦が勃発した。

 リング上で暁は、突然、服を脱ぎ始めた。次の瞬間にはコスチューム姿に。周囲の選手たちは笑いを堪えきれず、ざわつくリング。しかし当の本人は、眉ひとつ動かさない真顔だった。この日を境に、暁は"いつでもどこでも、脱げばコスチューム姿になる新人"として注目を集めることになる。

「マリーゴールドって、細い選手がいっぱいいるじゃないですか。こんな人たちにマーベラスが負けるわけないって、ずっと思っていたんです。『やるんだったら潰してやる』くらいの気持ちです。それに自分、対抗戦が好きなんですよ。9歳の頃から(団体)対抗戦を見て育っているので」

 3月30日、マリーゴールド後楽園ホール大会で、高橋奈七永&山岡聖怜 vs 彩羽匠&暁千華 のタッグマッチが行なわれた。暁は全女式押さえ込みを武器に果敢に食らいつき、見せ場をつくったが、惜しくも敗れた。

 試合後、高橋がマイクを握り、涙を浮かべながらこう言った。「こういう選手と引退前に出会えて、めちゃくちゃうれしい! 匠、よく育てたな......」。後楽園ホールに温かいざわめきと拍手が広がった。

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