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【プロレス連載】スタン・ハンセンのリング内外の顔を、元東スポ記者・柴田惣一が振り返る 長州力にラリアートを不意打ちした秘話も明かす (2ページ目)

  • 大楽聡詞●取材・文 text by Dairaku Satoshi

――昔、山本小鉄さんがアンドレ・ザ・ジャイアントさん、ハルク・ホーガンさん、そしてハンセンさんと焼き肉を食べに行ったら、120人前を食べて会計が53万円だったという逸話もあります。

柴田:あの頃のレスラーは、とにかくたくさん食べたからね。彼らだけの時は、きっちり割り勘でみんなしっかりしていたみたい。ただ、スポンサーがついていれば、それこそ食べ放題状態。「こんなに食えるんだ」とびっくりするぐらい注文するんです。まあ、そこまで食べっぷりがいいと、おごるほうもご馳走のしがいがあるってもの。壮観でしたよ。

【柴田氏もブルロープの餌食に】

――ハンセンさんは奥様が日本人ですが、当時から日本によく滞在されていたのですか?

柴田: そうだね。ある時期から、シリーズの合間でも横浜で彼が目撃されることが増えました。ハンセンは奥様にベタぼれという感じでした。実際にお会いしたことがありますが、優しくて明るく、とてもしっかりした方。英語もペラペラで、素敵なご夫婦ですよ。ハンセンの連れ子さんとも、仲よしで楽しく過ごされていました。

―― 一方でリング上では、本当に誰にも止められないパワーファイターでした。ブルロープを振り回して、観客を追い払う姿は名物でしたね。

柴田: そうですね。ある熊本での大会で、客席にいた私もそのブルロープで狙われたことがあります。全試合が終了し、メインイベントに出場した選手も引き揚げて、ファンの方も出口に向かい始めた時でした。私はリングサイトに設置された臨時の黒電話で、その日の原稿について、会社と打ち合わせをしていたんです。

 その時、お客さんが「わー!」と騒ぎ出した。気づくと、背後にハンセンがいて、私の首にブルロープが巻きついていました。そのまま数メートル飛ばされたんですが、あっという間のことでしたよ。

ハンセン(左)とポーズをとる柴田氏(写真/柴田氏提供)ハンセン(左)とポーズをとる柴田氏(写真/柴田氏提供)この記事に関連する写真を見る

――狙われたんですね?

柴田:ちびっ子ファンに「大丈夫?」と声をかけられたことを覚えています。のちのちわかったことですが、ハンセンが私が書いた記事を読んだそうで、「お前を狙ってやったんだ」と笑いながら話してくれました。

 でも、ハンセンは極度のド近眼。私を狙ったのは間違いないけど、ただ勢いで振り回していただけだという説もあります。彼は試合中にコンタクトレンズをつけていなかったんですよ。普段から相手レスラーがぼんやりとしか見えていなかったようです。なので、彼の代名詞であるウエスタン・ラリアートも、狙いを定めながらも、勢いで相手をなぎ倒していた。だからこそ、あれほどのド迫力だったのかもしれません。

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