検索

井上尚弥のいとこ・浩樹が明かすカルデナス戦のダウン 陣営は「無理して打たないでくれ!」と叫ぶも、崩さなかった攻めの姿勢 (3ページ目)

  • 篠﨑貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

【攻めの姿勢を崩さなかったモンスター】

――尚弥選手にとって人生初のダウンとなったルイス・ネリ戦(2024年5月・東京ドーム)の時よりも、今回のほうがダメージがあるように見えました。

「ネリ戦の時は尚弥さんも打ちにいっていて、その動きと相手のパンチの方向が同じだったので、ネリのパンチの威力がうまく逃げたように見えました。でも今回は、正面からまともにもらってしまった印象でしたね」

――2ラウンド終了後、インターバルでセコンドからはどんな指示が出ていたのかわかりますか?

「セコンドからちょっと離れていたので、何を話していたかはわからなかったんですが......おそらくは『集中しろ』といった声が飛んでいたと思います」

――下馬評やスポーツベットの倍率では大差がついていましたが、あのダウンで一気に流れが変わりました。

「正直、ああいう展開になるとは思っていなかったです。でも、そのあとの尚弥さんのリカバリー力というか、まったく攻めの姿勢を崩さなかったところは本当にすごかった。

 僕らはずっと、『無理して打たないでくれ!』『ちゃんと足を使ってポイントを取ってくれ!』って、叫んでたんですけどね。本人はそれを全然聞く様子もなく(笑)、自分のスタイルを貫いていました。あれをやれるからこそ、PFP上位の選手なんだな、今の地位があるんだなと、あらためて実感しました」

――3ラウンドは回復を図るラウンドとしてもいいところでしたが、尚弥選手はガンガン打ちにいきましたね。

「普通だったら、一度引いて立て直す選択肢もあると思うんですけど、逆に勝負をかけました。その判断がすごかった。逆に引いてしまえば、カルデナスが出てくると思っていたんでしょう。プライドもあったでしょうし、『ここは引いたらダメだ』と本能的に悟ったのかもしれません。そのあたりの勝負勘はピカイチですよね」

――尚弥選手のファイターとしての感覚や本能がそうさせたと。

「本人のなかで『これだ』というものがあるんでしょうね。だから、僕らが何か言っても、あまり変わらないと思います(笑)。とにかく、"勝負師"の顔が見えた試合でした」

(中編:井上尚弥の衰えは「まったく感じない」 いとこの浩樹は9月のアフマダリエフ戦のポイントを「スピード」と分析>>)

【プロフィール】

■井上浩樹(いのうえ・こうき)

1992年5月11日生まれ、神奈川県座間市出身。身長178cm。いとこの井上尚弥・拓真と共に、2人の父である真吾さんの指導で小3からボクシングを始める。アマチュア戦績は130戦112勝(60KO)18敗で通算5冠。2015年12月に大橋ジムでプロデビュー。2019年4月に日本スーパーライト級王座、同年12月にWBOアジアパシフィック同級王座を獲得。2020年7月に日本同級タイトル戦で7回負傷TKO負けを喫し、引退を表明したが、2023年2月、約2年7カ月ぶりに復帰。同年8月、WBOアジアパシフィック・スーパーライト級王座決定戦に勝利し、王座に返り咲いた。2024年2月、東京・後楽園ホールで、東洋太平洋同級王者・永田大士との王座統一戦に敗れた。2025年3月、ミハイル・レスニコフに3RKO勝利を収めた。
20 戦 18 勝 ( 15 KO ) 2 敗。左ボクサーファイター。アニメやゲームが好きで、自他ともに認める「オタクボクサー」。

◆YouTubeチャンネル:「井上ころまる」はこちら>>

◆X(旧Twitter):@krmr_511「井上浩樹 Koki Inoue ヰ乃上ころまる」>>

◆大橋ボクシングジム:詳細はこちら>>

著者プロフィール

  • 篠﨑貴浩

    篠﨑貴浩 (しのざき・たかひろ)

    フリーライター。栃木県出身。大学卒業後、放送作家としてテレビ・ラジオの制作に携わる。『山本"KID"徳郁 HEART HIT RADIO』(ニッポン放送)『FIGHTING RADIO RIZIN!!』(NACK5)ウェブでは格闘技を中心に執筆中。レフェリーライセンス取得。ボクシング世界王者のYouTube制作も。

【写真】 女優・ラウンドガール・格闘家の「三刀流」 宮原華音フォトギャラリー

3 / 3

キーワード

このページのトップに戻る