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【独占】93歳の超大物プロモーター・アラム氏が語る「モンスター」井上尚弥の魅力と2度目のラスベガスマッチ、そして中谷潤人戦

  • 杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke

井上尚弥(左)の魅力と5月のタイトル戦について語ったアラム氏 photo Morita Naoki/AFLO,Sugiura Daisuke 井上尚弥(左)の魅力と5月のタイトル戦について語ったアラム氏 photo Morita Naoki/AFLO,Sugiura Daisuke この記事に関連する写真を見る

"モンスター"のラスベガス登場が約1カ月後に迫っている。日本が産んだ最強王者・井上尚弥(大橋)は5月4日、T-モバイルアリーナでWBA同級2位のラモン・カルデナス(アメリカ/29歳/26勝:14KO・1敗)と対戦。井上が保持するスーパーバンタム級の4冠をかけての戦いとなり、ボクシングの聖地が熱く燃えることは必至だ。

 井上にとって2021年6月以来となる米リング登場を楽しみにしているのはアメリカのファンだけではない。"モンスター"とアメリカでのプロモート契約を結ぶトップランク社の大ベテランプロモーター、ボブ・アラム氏もそのひとりだ。かねてから井上の大ファンを公言する93歳の老雄も怪物の戦いへの期待感を隠していない。

 井上対カルデナス戦はいったいどんな戦いになるのか。収容人員2万人を誇るT-モバイルアリーナという大会場を満員にするためのビジネスプランは、どのようなものなのか。そして、長いプロモーターとしてのキャリアのなかで、井上に似た選手を見たとすれば誰なのか。

 3月29日、ラスベガスでの独占インタビューでこれらの問いにじっくりと答えてもらった。

【5月4日のESPNでは大谷翔平が前座に!?】

 5月4日の井上対カルデナス戦は、私も本当に楽しみにしている。もちろん井上が断然優位と目されているが、メキシコ系の若者(=カルデナス)も全力を尽くしてくれるという自信がある。

 カルデナスはとてもタフで、耐久力があり、そう簡単には倒されないとは思う。試合が続く限り、エキサイティングな戦いになるだろう。ノックアウトに結びつけるためには、井上といえどもハードワークを余儀なくされるはずだ。ただ、ここで予想をするなら、現状では"モンスター"に勝てる選手が周辺階級にいるとは思っていないとだけ言っておこう。

 今回のイベントのために私たちは約2万人を収容できるラスベガス最大の屋内会場、T-モバイルアリーナを用意した。本当に大きな会場ではあるが、チケットセールスは非常に順調だ。最終的には2万人に近い観衆が集まるだろうと考えている。

 井上にとって久々のアメリカのリング登場とあって、ボクシングファン、関係者の間での期待度の大きさは明白だ。ボクシングに興味があるものなら誰もがアリーナに足を運び、リングサイドで試合を観たいと感じさせる興行になっている。

 メキシコで最大級の休日である"シンコ・デ:マヨ"(5月5日)の週末に組み込んだおかげで、多くのメキシカンたちにとっても注目のイベントになった。ご存知のとおり、カルデナスはメキシコ系アメリカ人だ。セミファイナルにはメキシコのファンの大きな期待を集めるようになったWBO世界フェザー級王者、ラファエル・"エル・ディビーノ"・エスピノサ(30歳/26戦全勝:22KO)の防衛戦も用意した。エスピノサがエドワード・バスケス(アメリカ/29歳/17勝:4KO・2敗)と対戦する試合を楽しみにアリーナに来るファンがたくさんいるに違いない。

 このようにして私たちは井上の戦いをライブで観たがっているアメリカのボクシングファン、ボクシングと"シンコ・デ・マヨ"を楽しみにしているメキシコの人々、そしてもちろん日本の人たちと、さまざまなファンベースを惹きつけるイベントを作り上げたというわけだ。

 エキサイティングな気分が味わえるのはT-モバイルアリーナに来る人たちだけではない。ESPNと話し合い、テレビ放送に関しても趣向を凝らした。"モンスター"の試合の視聴者を限定するのは私たちの本意ではなく、だからペイパービュー(PPV=課金コンテンツ)イベントにはしなかった。ESPN+(プラス)での動画配信だけではなく、リニアのESPN、ESPN+の両方で視聴可能になる。

 当日はまず大谷翔平が出場するロサンゼルス・ドジャースとアトランタ・ブレーブスの試合がESPNで中継され、そのすぐあとにボクシング中継に切り替わる。オンディマンドでの視聴者も考慮すれば、最終的にはすごい人数が井上の試合を見ることになるのだろう。

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著者プロフィール

  • 杉浦大介

    杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)

    すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう

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