天龍源一郎がケンコバに「あん時の男か」 柴田勝頼に勝利した試合中のサムズアップ
令和に語り継ぎたいプロレス名勝負(11) 中編
(前編:『やめろぉぉ!』天龍源一郎の「53歳」に柴田勝頼が白目 リングサイドのケンコバは叫んだ>>)
天龍源一郎の「53歳」と柴田勝頼の「PK」。投げと打撃、まったく系統が違う必殺技のすさまじい応酬に、リングサイドにいたケンドーコバヤシさんが「やめろぉぉ!」と叫んだという、2004年11月13日の大阪ドームでの天龍vs柴田。そのエピソードを語る中編では、試合中にあった天龍との"やりとり"、それから数年後のまさかの共演などを語った。
入場時に花道で柴田(右)に掴みかかる天龍 photo by 山内猛この記事に関連する写真を見る
【柴田を場外に落とした天龍からのサムズアップ】
――天龍さんが若手だった柴田選手を相手に「なぜそこまでやったのか?」というほどの攻めをしたことが謎のひとつ目とのことでしたが、もうひとつの謎と、ケンコバさんの「人生に深く関わる出来事」も語りきれていません。どちらを先にしますか?
「もうひとつの謎を明かす前に、俺の人生に関わる出来事から話しましょうか。
それは試合終盤でのこと。天龍さんがリングのエプロンに立ち、53歳の態勢から柴田選手を抱え上げて場外に落としたんです。投げた形はDDTのような感じになったんですが、柴田選手はえげつない高さから投げ捨てられて脳天を強打しました」
――あまりにも壮絶なシーンに、客席が騒然となったことを覚えています。
「実は、俺が買ったリングサイドの席が、柴田選手が落とされた場所の近くの席だったんです。あまりにもすさまじいシーンだったので、周りのお客さんは『うわ、危ない!』と顔を背けたり、席を立ったりした。でも俺は、微動だにせずそれを見ていたんです」
――さすがですね。
「いや......実際は面を食らったというか、腰を抜かしたようになって動けなくなっただけなんです(笑)。その近くに、柴田選手が落ちた。体が金縛りのように硬直してしまったんですが、顔をパッと上げた時、天龍さんと目が合ったんですよ。
その瞬間に、天龍さんが俺に向かってサムズアップ(親指を立てるジェスチャー)をしたんです。震えましたよ。俺はパニック状態で動けなかっただけだけど、天龍さんは『兄ちゃん、よく逃げなかったな』と言わんばかりにサムズアップをしてくれたんです」
――そのジェスチャーをしたのは、相手がケンコバさんだとわかったからではないんですか?
「たぶん違いますね。当時、俺は関西ローカルの芸人でしたから、天龍さんは絶対にわかっていなかったはずです。
ただ、この話はここで終わりではないんです。時計の針は、この大阪ドーム大会から数年後に飛びます」
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