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堀口恭司が考える、日本の総合格闘技が「遅れてる」理由。RIZINとBellatorの対抗戦でも見えた「完成度の差」はなぜ生まれるのか (2ページ目)

  • 篠崎貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro
  • 田中亘●撮影photo by Tanaka Wataru

【総合格闘技をとりまく環境の差】

――Bellatorの5戦全勝となったRIZINとの対抗戦、大会後に堀口選手は日本とアメリカの「技術の差」について言及していました。堀口選手が所属するアメリカン・トップチームだけでなく、アメリカは総じてジムのレベルが高いのでしょうか?

「他のジムもレベルが高いかどうかはわかりませんけど、ATTのコーチたちは本当にいろんな試合を見ています。彼らは常に新しい技術を研究して、どんどん取り入れているんです」

――堀口選手がかつて所属していた「KRAZY BEE」(山本"KID"徳郁氏が設立した総合格闘技のジム)からATTに移ったあと、もっとも違いを感じたのはどのあたりでしょうか?

「日本はまだまだ、『総合格闘技が職業として確立されてない』ということですね。RIZINが出てきて各メディアで放送されるようになって、他にも新しい団体ができてきたり、そういう流れになってきた感じもありますが、コーチなど指導する側が全然足りていない。

 一方でアメリカでは、総合格闘技が競技としても、関わる人たちの仕事としても成り立っています。生活も保障されているからこそ、いいコーチが揃い、全体のレベルが上がる。格闘技だけできちんと生活ができることが、大きな違いかなと思います」

――練習環境については、日本の場合は所属ジムとは別にボクシング、キックボクシング、フィジカルトレーニングなどをそれぞれ別のジムで行なう選手も多いように感じます。それに対してATTでは、すべてを一か所でできるわけですね。

「そうっすね。ひとつの場所で全部できることは、簡単に言うと『強くなるための近道ができる』ということ。僕の場合は、ヘッドコーチのマイク・ブラウンのほかに、柔術のコーチなど各部門のプロフェッショナルがついています。

 彼らは毎週2回、コーチ同士で話し合いをします。これはトップのファイターに限ったことですけど、『この選手はどう伸ばしていく?』といったように指導方針をミーティングするんです。それも日本のジムではあまり見られない光景ですね。ATTが特別なのかもしれませんけど、コーチ陣も日々レベルアップに向けて動いています」

――複数のジムでバラバラに練習をする場合、それをトータルで見てくれるヘッドコーチの存在は必要でしょうか?

「いることが理想ではありますね。出稽古でどこかのジムに行く場合は、自分に足りていない技術、身に着けるべき技術の取捨選択をすべて自分で判断し、『どのジムに行くのか』などを含めてまとめないといけない。それができる選手は多くないと思うんです。僕も日本にいた時には『自分でやれる』と思っていたんですが、アメリカに渡ったあと、寝技など足りない部分がすごくあったことに気づいた。自分の"穴"をトータルで埋められたので、すごくラクでした」

――堀口選手の場合、ヘッドコーチのマイク・ブラウン氏が練習メニューを考えるんですか?

「基本はそうですが、あまり『コレをやれ』と強く要求されることはないです。『コレやったほうがいいんじゃない?』と客観的な視点から提案してくれる感じです。各専門のコーチ陣も、かなり細かい部分のアドバイスをしてくれますね」

――ATTは質の高い選手が多いことも強みでしょうか?

「それも大きいです。ATTには、レスラー、柔術家、打撃が得意な選手など、あらゆるタイプの選手がいます。だから、自分の対戦相手に近いタイプの選手と一緒に練習することもできるんです。そういうところでも差は生まれるかもしれませんね」

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