いじめで不登校、無視したとケンカを売られ...耳の聞こえない女性がプロボクサーになるまで「臆病者だから、強くなりたかった」
元ボクサー・小笠原恵子 インタビュー前編
俳優・岸井ゆきのが聴覚障がいのあるプロボクサーを演じる、映画『ケイコ 目を澄ませて』(12月16日公開)。そのモデルとなった女性が、小笠原恵子さん。映画で描かれなかったその人生の"それまで"と"それから"とは。
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現役プロボクサー時代の小笠原恵子さん 写真提供/小笠原恵子この記事に関連する写真を見る『きみの鳥はうたえる』(2018年)で数々の映画賞に輝いた三宅唱監督が、岸井ゆきのを主演に迎えて描いた『ケイコ 目を澄ませて』。原案となった自叙伝『負けないで!』(創出版)の著者で、主人公・小河ケイコのモデルとなった女性が、元プロボクサーの小笠原恵子さんだ。
ケイコと恵子さんの共通点は、生まれつきの聴覚障がいがあり、ゴングの音もセコンドの指示も聞こえないなかでリングに立ち続けたこと。映画は2020〜2021年が舞台だが、恵子さんは2010〜2013年にプロとして活躍した。引退から10年、恵子さんは今、どのような人生を送っているのかーー。
2022年11月下旬、恵子さんに指定された取材場所は、東京・江戸川区にある「Splicing Brazilian Jiujitsu」だった。ブラジリアン柔術歴20年以上の黒帯指導者・原秀紀さんが2017年に開いた道場だ。そこに現れた恵子さんは、現役時代より髪が伸び、女性らしい印象。152センチと小柄だが、ガッシリとした体躯がわかる。
インタビューに答える恵子さんこの記事に関連する写真を見る「私は今、ブラジリアン柔術を中心にやっているんです。普段は墨田区のジムで練習していますが、月に2〜3回、『Splicing』の道場を借りて『手話柔術教室』を行なっています」
「手話柔術教室」では、1回2時間で、手話と柔術を同時に学べるという。この日は、子どもから中高年まで約20人の男女が集まっていた。参加者のなかには聴覚障がいのある人もいる。道場の壁には、『ケイコ 目を澄ませて』のポスターが貼られていた。
現在はブラジリアン柔術に取り組むこの記事に関連する写真を見る
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