いじめで不登校、無視したとケンカを売られ...耳の聞こえない女性がプロボクサーになるまで「臆病者だから、強くなりたかった」 (2ページ目)
【映画と似ていたのは「暗さ」だった】
映画は、恵子さんの自伝を原案としたフィクション。自身をモデルにした映画が生まれたことについて、どのように感じているのか。
「私には何の才能もないので、恥ずかしい気持ちです(笑)。実は10年ほど前に、テレビドラマ化の話もあったんです。でも、いつの間にか流れて、なくなって。その5年くらいあとにまた出版社から連絡が来て、今度は映画化の話が来ていると。そこからまた連絡がなかったので、また流れたのかなと思っていたんです。そうしたら2年前に、『もう女優さんもスポンサーも決まっています』と(笑)」
『ケイコ 目を澄ませて』ではケイコ役を岸井ゆきのが演じたこの記事に関連する写真を見る 恵子さんは幼少期から発音の訓練を受け、話すことができる。ただし、こちらの声は聞こえないため、道場の仲間に手話で質問を伝えてもらいながら対話を行なった。映画の撮影が始まってからは、一度、現場見学に訪れたという。
「ケイコがプロになって2戦目のシーンの撮影を見に行きました。けっこう長い時間をかけて撮っていたのに、完成した映画を見ると短くて、『大変な仕事だなぁ』と思いましたね。完成した映画は、3回見ました。3回目は全部のシーンに字幕がついていたので、わかりやすく、映画としても楽しめました」
恵子さんには聴覚障がいのある妹がいるが、ケイコには健常者の弟がいる。また、恵子さんは現役時代に歯科技工士の仕事をしていたが、ケイコはホテルの清掃係だ。異なる設定も多いが、「主人公は、ほぼ私だと思いました」と恵子さん。
「特に似ていたのは、暗さです。現役時代の私は、まったく笑わなかった。映画を見ながらいろんなことを思い出して、泣いてしまいました」
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