両親の激しい口論。父が発した衝撃の言葉......。傷ついた朱里が辿り着いた「リング」という輝ける場所
■『今こそ女子プロレス!』vol.4
「モノが違う女」朱里インタビュー・前
昨年3月から本サイトで短期集中連載した『最強レスラー数珠つなぎ・女子レスラー編』。「強さとはなにか?」をテーマに白川未奈からスタートし、中野たむ、岩谷麻優、林下詩美、そしてジュリアと、スターダムの選手たちに話を聞いていった。
プロレスに出会うまでの経緯を語った、ワールド・オブ・スターダム王者の朱里この記事に関連する写真を見る そこで連載は終了したが、わたしはその後もインタビューを続け、計10人の女子レスラーとの対話が書籍『女の答えはリングにある 女子プロレスラー10人に話を聞きに行って考えた「強さ」のこと』(イースト・プレス/4月14発売)にまとめられる。
連載が終わり、真っ先に話を聞きに行ったのは朱里だった。キックボクシングでチャンピオンになり、総合格闘技でもチャンピオンになり、世界最高峰のUFCと契約した。しかし誰よりも強くなったはずなのに、プロレスではトップになれない......。本書では、半年前の彼女の葛藤を収めた。
その後、彼女はワールド・オブ・スターダム王座(通称"赤いベルト")の王者になり、3月10日には初の自伝『朱里。 プロレス、キック、総合格闘技の頂点を見た者』(徳間書店)を上梓する。本記事では、葛藤を抱えていた彼女のインタビューより、プロレスと出会うまでの孤独な日々、リングに上がって光が見えた瞬間などを紹介する。
***
2021年8月某日、うだるような暑さのなか、東京・錦糸町にあるスターダム道場を訪れた。待ち合わせ時間に5分遅れてきた朱里は、こちらが恐縮するほど「ごめんなさい、ごめんなさい」と繰り返し頭を下げる。想像したよりも小柄で、腰が低く、あのUFCで活躍した女性とは到底思えない。
しかし「練習風景を見せてほしい」と言うと、目つきが変わった。プッシュアップ、スクワット、走り込み、蹴り――。真剣な眼差しは、世界で闘ってきた女のそれに違いなかった。
インタビューはリングの上で行なうことになった。ロープをくぐることすらままならないわたしに、そっと手を差し伸べてくれる。ああ、とても優しい人なんだなと安堵した。
1 / 5