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ドネアに聞いた井上尚弥との再戦の可能性。フィリピンの英雄は最後にリングサイドで叫んだ (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Kyodo News

【最大の懸念材料は?】

 また、1階級上のスーパーバンタム級の王者たちも統一戦路線を歩んでおり、指名戦を含めてすでに標的は定まっている。井上本人が言及したことで話題を呼んだ、井岡一翔(志成ジム)との"日本人ドリームマッチ"も、当面はリアリティーのある話ではない。そんな状況で、2019年11月の前戦で"ドラマ・イン・サイタマ"と称されるほどの激闘を演じ、素行的に心配がなく、日本でも人気があるドネアとのリマッチ以上に魅力的なカードはなかった。

 中には、ドネアが昨年行なった2試合、ノルディーヌ・ウバーリ(フランス)戦とレイマート・ガバリョ(フィリピン)戦が『Showtime』で放送されたことを気にするファンもいるかもしれない。Showtimeは、井上の米国内のプロモーターである「トップランク社」が契約する『ESPN』とライバル関係にあるからだ。ただ、これも大きな問題ではない。

 ドネアはShowtimeと関係が深い「プレミア・ボクシング・チャンピオンズ(PBC)」のアル・ヘイモン氏の傘下ではなく、プロモーターのリチャード・シェイファー氏が新設した「プロベラム社」の契約選手。プロベラムは「プロモーターの分け隔てなく好ファイトを生み出すこと」を目標としている。

 Showtimeのスポーツ部トップであるスティーブン・エスピノーザ氏も、ドネアへの愛着とリスペクトを語りつつ、「現時点でのドネアの目標が、Showtimeとの独占契約じゃないことは理解している。ドネアの統一戦の妨げになるつもりはない」と明言していた。
 
 これらの背景から、本来であれば3年近い時を経ての"ドラマ・イン・サイタマ"の続編は、交渉がそれほど難しいカードではなかったはずだ。通常の世界情勢なら、ほとんど問題なくまとまっていただろう。新型コロナウイルスによるパンデミックさえなければ――。

「現在の日本はまだ入国制限があるので、そこも交渉時の話し合いのひとつになっているということです。すべてプロモーターのシェイファー氏に任せています」

 ドネアがそう述べるとおり、最大の懸念材料は日本における「外国人の新規入国の原則禁止」だろう。こればかりはボクサーやプロモーターがどうこうできる問題ではなく、昨年末に予定された村田諒太(帝拳ジム)vsゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)、井岡vsジェルウィン・アンカハス(フィリピン)が中止、延期を余儀なくされたのはご存知のとおりだ。

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